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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第20話「小舟」

   2017年6月30日  

島に流れ着いた男にキールが浚われた。

「私を信じて」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

新章 第20話「小舟」

 

 
「エリザっ!」
「やっと見つけた!」
「? ピアズ、マイル…?」

 私は振り向いた先にいた少年達の焦った表情を見て、首を傾けた。

「一体どうしたの? そんなに慌てて」

 悲鳴のように甲高い声で名前を呼ばれた私は、海から浜へ出ると、駆け寄ってきた彼等の背に手を当てた。

「大丈夫? 二人共、凄い汗だよ?」
「た、大変なんだ」
「大人達は反対側の村に行ってて、それで……!」
「どうしようエリザッ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてっ」

 私がそう声をかけても、二人は荒く呼吸を繰り返したままだった。そんな彼等を見て、私は言葉では言い表せない不安を覚える。

 ピアズとマイルは、年のわりに随分としっかりした一面を持つ少年達だ。だが今は、激しい動揺が表情にも声にも表れていて、誰が見ても冷静さを欠いていた。
 があったのは間違いない。師匠やスウェナ等の島の大人に頼らなければならない状況なのも確かだろう。だが、今日は生憎行事で皆出掛けている。

「…………」

 反対側の村、ツィー村まではここからかなり距離がある。この二人はそこへ行くよりも、私のいる場所を目指したのだ。至急助けが必要な事態で、彼等は私を頼った。
 拳を握り締めると、私は屈んで彼等を見上げた。
 私に今出来ること――――……それは彼等の心を守ること。

「何があったのか話して。絶対に私がどうにかするから」
「エリザ……!」
「私を信じてここまで来たのでしょう? 違いますか?」
「…………」

 私の言葉を聞くと、ピアズは額に浮かんだ汗を拭った。そして強く頷くと、私の手を掴んだ。

「さっき、岸の方で小舟を見つけたんだ…」
小舟? 誰か乗っていたの? まさか怪我人が!?」
「…………」
「ピアズ?」
「……男が、乗ってて……それ、で……僕達駆け寄ったんだ」

 言葉を詰まらせたピアズの代わりにマイルが話し出す。
 二年前に倒れていた私を発見したのも彼等だった。また誰かが困っていると思い、大人に報告する前に自分達で動いてしまったのだろう。

「それでどうしたの? 何故島長である師匠ではなく私の元へ…?」
キールがそいつに連れ去られたんだッ!!
「キ、キールが…!?」
 

 

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