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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-7

   

 裏切者の正体がわかり、御影たちは策を練る。

 病院では小柴たちが入院しているため追撃がないともわからない。人手がいる。護らないとならない。

 そこに水桐の友人が現れた。そうとうな美人だが口調がおかしかった。やはり元レディース上がりなのが残念なところだった。昔ならした腕っぷしと根性は筋金入りだ。

 妙なことになっているが、これで氷室たちは病室をでることができた。
 
 

 その頃、政木警部らも新宿の氷室探偵事務所を爆破した犯人が誰かわかった。

 衝撃的で受け入れるのに時間がかかるが考えている暇はない。こうしているあいだにも氷室たちが追い込まれていく。

 心配しているのは政木警部だけではない。そこへ携帯電話が鳴った。政木警部は着信の相手を見て影が差した。

 その相手とは…。

 

 春の夜はまだ少しひんやりとしている。人目を阻むように氷室探偵社の面々は行動を悟られないように身を固めるような恰好で変装した。

 お気に入りの帽子をかぶり、サングラスをする。服装も身体の線がみえないように全員が春コートに身をまとう。体形を悟られないためだ。

「武装は万全にしましょう。なんといっても敵は警察や政治家が相手、捕まったら終わりだ…」御影はいつになく脅えていた。春コートを着てよかった。膝の震えを隠せるのに好都合だった。

「おまえの気持ちはわかるよ。警察やボディーガードなんてどうでもいいんだろ、本当はさ…雲田さんや森谷さん、川上を相手にするのに抵抗がある。俺だって同じだ。やりずらいよな、なんかさ」火守が苦心していた。

 同感。誰がもそう思っている。御影に至ってはまだ付き合いは一年だが、ほかの探偵たちはもう数年の付き合いだ。自分よりも深い思い出がある。たとえそれが互いのプライバシーに踏みこんでいないとしても、表面化な関係性も時には引き裂けない感情が介入してくるものだ。

「あら、川上くんが相手ならわたしは往復ビンタで粉砕してあげるわ」水桐の容赦ないひと言に御影と火守は怯んだ。

「さすが水桐探偵だ…、御影を追いかけまわしただけのことはある」火守は皮肉をいった。

「追いかけまわしただけじゃないっすよ、捕まったとき回し蹴り喰らってますから…」御影は背中の激痛が響いた。

「なに、そんなことを…、病院だぞ、ちょっとは考えろよな」火守は御影よりも体裁を心配していた。

「ちょっと、あなたたち」冷たい閃光が二人にむいた。

「きみたち、そんなことをくっちゃべっているばあいではないよ。どうにかして見方を増やしたい。できれば政木警部から情報をほしいところだ」氷室は携帯電話の電源を切っていた。

 鳴らない電話をそれぞれが気にしている。水桐は病院内にある公衆電話を使用していた。

「電源を入れた時点でこの病院にいるのがバレるよな」火守がいった。

「そうね…」水桐は真っ黒の画面を愛しそうに見ていた。「はぁー」

「つらそうですね」御影は水桐にいった。

「まぁね、LOTO買ってたのよね、結果とか明日くらいなのよ…」

 御影と火守は顔を引き攣らせていた。

 氷室はぷっと、吹きだしていた。

「でも、もうバレているんじゃないかな…、爆発した探偵社の場所から搬送されるとしたら病院は限られる。もうここに一日匿ってもらっているようなものだ。一般人がいるから相手が手出しできないだけで、どこかに潜んでいるかもしれない」御影は推測した。

 火守が病室から外を見ていた。監視されているかどうかを細かくチェックしていた。「すでに監視されているかもしれないってわけだよな」

「はい、そうなります」

「ずっとアンテナ張ってたが、これといって怪しいやつは見当たらない。もっともこっちの窓から見える範囲の視界だから、死角になっているところから狙っているかもしれない。そうなったら見当もつかない」

「だからわたしの仲間に頼んだんでしょ」

 そこに水桐の友人らが訪れた。扉が開いた。ナース姿の一人の美女が現れた。

「おおぉ」男たちは唸り声をあげた。

「総長…ちゃす」見た目の美しさとちがって頭が悪そうな口調に驚いた。

 可憐な美女のお出ましに、目を光らせた男たちの眼光は灰色になった。

 耳をふさいで観賞しよう。芸術とは心の目で見るものだ。

「やっと来た、あとはここを任せるから、頼むわね」水桐は友人のナース姿をツッコまない。

 常習化なのだろうか。この二人の、いやほかにもまだくるらしいが、まさか同様なコスプレマニアの元レディースが牙城となるのか。

 御影は長年付き合いのある氷室や火守の顔色を見ても、初めてみる光景に驚愕している。仕事のときにはみせない水桐のプライベートの一面がこれなのだろう。

 大地はスルスルと部屋の隅に小さな身体を隠した。

「あと二人か三人は来ます。ここは任せてくだされ」警官のように敬礼する水桐の可憐な美女の友人。

「あんたね、敬礼するなら婦人警官のコスプレにしなさいよ。白衣の天使はそんなことしない」

「あっ、いっけね、まちがえた」舌を下品にだしてペコちゃんとは似つかわしくない表情になった。

「ありえん…」美人だと思っていたが、とんだ変顔をしてみせた。御影は強烈に引いた。

「あ、あとは頼みます。ナース姿、似合ってますね」氷室は精いっぱいの褒め言葉を捧げて、ついに病室を出た。

 

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