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ラブストーリー

残念女子は、それでも恋を諦めない8

   

恋愛に対して奥手・苦手な「残念女子」こと、小笠原 結愛。そんな彼女が、急きょイケメンの双子と同棲することになった!?
三か月間の期間限定とは言っても、同棲が学校にばれたら即退学!
ヒミツの同棲を、結愛は何とか乗り切ることが出来るのか?

 

『一人の男をめぐる二人の女』――とりあえずカッコイイ言葉で自分の今の状況を把握してみようとするけれど、カナタ君を「めぐる」ほど、私がまだ彼にはまってしまっているわけでもないし、残念ながら真理子ちゃんとやり合って勝ちたいと願うほど、まだ彼に執着もない。そりゃ、物理的な強さでは私が勝つのは分かりきっているけれど、恋愛の勝負は腕っぷしの強さは関係ない。悲しいかな、むしろ女子力の部分で1RをTKO負け間違いないわけで。

 ――さて、一体何の話だろう。
 そうだ。せっかくだし、きっと今後こういう機会はないから、「貴女とカナタ君、付き合ってないんでしょう!? 私、彼から聞いてます! 彼は渡さない……渡さないんだから!」とか何とか、言ってみようか。うん、でもこれだと何かドラマの登場人物みたいだぞ。
 そんなことを思うも、私はすぐに気づいた。
 こういうセリフをドラマの中で言う奴は、大抵酷い失恋をするか、厄介者扱いで殺されるということに。ラスト十五分くらいで、たいていヒーローに裏切られて、別の女には知られる。そしてそれを「頑張んなさいよ」とか言って、自分の気持ちを押し殺して応援したりするんだ。
 ――ああやっぱり私、どこかヒロインになりきれない、残念女子。しかも応援してやるほど恋愛経験が豊富じゃないから、見せ場が無い。振られっぱなしで終了。もしくは厄介者扱いで消されて終了。もう悲しいを通り越して不憫すぎて笑う。

「ふっ……」
 そんな私が脳内で一人、そんなやりとりをしていると、

「結愛ちゃん?」
 いつの間にか、真理子ちゃんが私の顔をじっと見つめていた。

 まつ毛がくるんとして、ぱっちりと大きな目。同性なのに目が合うだけでドキドキする。
 しょっぱなから物凄い女子力パンチだぜ、と私は一瞬くらっとするも、

「あ、ごめん……大丈夫。で、何?」
 私は慌てて繕い笑顔を見せる。と、
「結愛ちゃん……最近、カナタと仲いいの?」
「えっ……」
「昨日、カナタに聞いたの。古賀彼方……勿論知っているでしょ? カナタとヒナタが、結愛ちゃんのお父さんが留守の間、結愛ちゃんの身に何かあったら困るからって、『時々』見に行くように頼まれているって言っていたもの」
 様子見やごまかし云々ではなく、いきなり本題に入った真理子ちゃんはそう言って、私の顔をじっと見る。

 ――カナタ君、本当の事は彼女に言ってないんだ。「時々見に行くように」だなんて真理子ちゃんに説明するくらいだから。そりゃ、そうか。まさか「二か月間、ボディガードとして同棲している」とは、いくら昔なじみとはいえ、中々言えるものじゃないとは思うけれど。

「あ、うん……そ、そうなんだ。なんか二人に気を使ってもらっちゃって……」
「最近、二人に会わなくなったから、どうしたんだろうって思っていたの。そしたらカナタがそんなことを言うから。まさかクラスメートとそんなことになっているなんて、思わなかったよ」
 真理子ちゃんはそう言って、耳に髪の毛をひっかけながら笑う。

 ふわふわの、緩いパーマがかかった、茶色ががかった柔らかい髪。少し風が吹くだけで、周りにシャンプーの匂いが広がる。ああ、なんていい匂い――私がそれにつられてふにゃ、と表情を崩すも、

「えっと……真理子ちゃんは、カナタ君とはその、付き合ってないんだよね?」
「え?」
「カナタ君が言っていたの。……あ、変な意味じゃなくて! もしカナタ君やヒナタ君にそういう人が居たら、こんなこと頼んでいたら迷惑になるし、彼女にも悪いかなあって思ったから! だから本人に聞いただけなの! そうしたらそうやって返ってきて!」

 私は真理子ちゃんを刺激しないように言葉を選びながら逆に質問をした。すると真理子ちゃんは一瞬驚いた表情をするも、何故か含み笑いをした後、
「……うん、そう。付き合ってはないわ。でも……」
 そう言って、そっと私のすぐ傍に寄ってきて、耳元で囁く。

「でも……私たち、子供の頃からずっと、高校入学まではずっと一緒にいたのよ。だから私は、カナタの事は他のどの女の子よりもよく知っているわ」
 勿論、ヒナタもだけど。真理子ちゃんはそこまで言うと、私からすっと離れた。そして、
「そうだ結愛ちゃん、知ってた? カナタって、長くてパーマのかかった髪、好きなのよ」
「え?」
「ふふ……まだ知らないか。そうだよね、まだ出会って三日だものね」
 私にニコリと微笑んだ後、教室の中へと入っていった。私は一人ベランダに取り残され、ぼーっとそこにたたずむ。

 

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