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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-9

   

 政木警部は早急に氷室探偵社の事務員らが負傷して搬送された病院を探す。そこに氷室もいると睨んだ。

 病院がわかると伯田警部補と黒川刑事とともにむかった。しかし、そこには妙な女たちが立ちはだかる。

 小柴は襲撃してきた刺客が誰か、なんとなく察しがついた。レディースたちは血湧き肉踊ってしまい聞く耳がなかった。闘魂が灯った熱き心は刺客を打破することしかなかった。

 小柴の一喝によって抗争は鎮静化した。互いの誤解が解けたところで翌日退院することになる。

 政木警部はこの場に氷室がいないことがわかると残念だった。だが、小柴の情報によってスタート地点にもどることになる。

 すでに探偵たちは手分けして行動している。

 

 政木警部が出ていくとき、後部が最後にいった。

「近くの病院を隈なく調べるんだ」

 新宿の探偵社が爆破して、救急搬送された病院がどこに運ばれたのかわかった。

 黒川刑事が気をまわして調べてくれていた。気が利くようになったと政木警部は無表情で褒めた。

「爪楊枝一本分だけね」

 伯田警部補は吹きだしたが、それでも黒川は嬉しそうに頭を掻いて照れていた姿をみて、笑みをしまった。

 運転はいつも伯田警部補だ。助手席には黒川。そして政木警部は後部座席の真ん中で脚を組みふんぞり返っている。ミラー越しで見える政木警部の威圧感は伯田のドライビングテクニックを鈍らせるものがある。

 それでも安全運転でしっかりと注意を払って病院に乗りつけた。

「ここだったの、目と鼻の先だったんじゃない…」政木警部は警察車から降りた。

「普通はすぐに搬送車を調べる、近くの病院を片っ端から電話して聴くかしますが…、今回は事情だけに感情が混線状態してましたからね、しかたないですよ」伯田警部補は、政木警部の心をまるで掬うかのような言葉を投げた。

「舐めてる、あなたは…」ミラー越しで強烈な眼光が放っていた。おそらくバックギアを入れるのは困難である。

 受け付けの事務の女性たちに、三人が二日前の夜に起きた爆破事件で搬送された患者がここに運ばれたと思う、思い浮かべる名前を順に告げていった。

 受付の横には売店があり、間食の菓子パンを買っていた一人のナース姿に扮する細身の女。顔は真っ白で唇は真っ赤の濃いめの化粧をしている。明らかにコスプレの一般人だと、警部補がその変質な女を一瞥する。だがただの患者なんだろうとすぐに意識から離し受け付けの女性の案内に耳を傾けた。

 ナース姿のコスプレ女はその場をゆっくりと去るように、すぐに小柴たちが入院している病室へと戻った。

「デカよ」女はいった。

 目撃した女のほかに、水桐の友人で元レディースの女たちが立ち上がる。

「何人?」

「男が二人、女が一人の三人…、でも女が偉そうだった」

「そう、ついに来たわけ刺客め、返り討ちにしてやる。おまえら! いっちょ大騒ぎを起こして追い返してやろうじゃないか」

「ぅおおおおおおお!」

 獣のような女は、水桐の友人。そう思うと同室している小柴たちは気が休まるどころではない。

 ほとんど動けるようになりはじめていた小柴たちだが、ただ心の傷が癒されていない。

 小柴は、レディースの女たちの会話を聞いていたがすぐに察した。「ちょっと、あなたたち、待って…、だ、だいじょうぶだと、思うわ、そのひとたち…」

 女たちの勇み足と奮起によって、小柴の声など微塵もとどかない。

「みなさんは安静に、ぜったいに中へは通さないっす! いくぞ、おまえら!」

「おっしゃ、かつての大和魂を灯せやぁー!」

「ぐやぁあっぁぁぁぁぁ!」

 小柴は呆然とその円陣にも似た互いの咆哮とエールを滾らせるように熱くなっていた元レディースたちに頭を抱えた。「やだ、ついていけない…」

 撃って迎えるつもりだ。病室の前は血しぶきが舞うだろう。

 なにが彼女たちをあれほど鼓舞するのだろうか。小柴には考えられなかった。淑やかに、慎ましく、というのが女性の振る舞いだからだ。大地ではないが、さすがにこの頑丈な心と鋼鉄な精神には小柴は白旗をあげる。幾分水桐がまともに思えた。おそらく昔の血が騒ぐのだろう。事は穏便に進められるというのに。

「小柴さん、もしかしてここにきた刑事って…」佐伯も感づいた。

「えぇ、たぶん、あの三人かも…」

 小柴はゆっくりと歩き扉に近寄った。すると外の騒ぎが病室の中までとどいた。扉を開くと見覚えのあるメンツがやはりいた。

 レディースの四人と刺客と思われる三人の刑事の対決がはじまろうとしていた。

 諍い状態に、血の気が高まっていたのはレディースたちだった。

 力でねじ伏せる。この場の悪化となるべき状況を演出していたのは氷室や水桐の提案だったことを、小柴はこの光景を目の当たりにして理解した。

「やめなさい!」小柴は吠えた。

 政木警部はその声に反応した。「小柴さん、あなた無事なのね」

 レディースの女たちは困惑していた。伯田警部補と黒川刑事はいきなりのことで手足もだせず突っ伏して、女が馬乗りになって拳の連打をうけていた。

 みっともない姿を垣間見てしまった小柴は、冷ややかに見おろしていた。

「政木警部、そのひとたちは見張ってくれてたの…」小柴は詫びた。

「水桐探偵の友人でしょ、なんとなくわかるわ、この威圧感というのかしら…、だから筋金入りってわけね」政木警部はやれやれといった感じに息を吐いた。スーツの皺も同時に手で払った。

「敵じゃないの?」ナース姿のレディースの女は、やってしまった、とうつむていた。

 

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