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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第21話「まだ、終われない」

   

キールを浚った男は、プランジットの民の生き残りだった。

「あなたの恨みは、私が受け止めましょう」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

新章 第21話「まだ、終われない」

 

 
「亡国の……王子ですって?」

 この男は一体何を言っている。亡国の王子とは、まさかルイスのことを言っているのか。

「あなたは、何者なの?」

 私が呆然として尋ねると、男は食い縛った歯の隙間から、荒く息を吐いた。憎悪に取り憑かれたような表情をして、彼は剣を握り締める。

「俺は――――亡国カーネットの町、プランジットの出身だ」
「! プランジット…!?」

 私は崩れ落ちそうになった膝を支えて、目線を落とした。脂汗が背中を伝う。
 動揺を悟られてはいけない。彼が何者であっても、キールを救うことが優先だ。そう頭ではわかっているのに、体が勝手に拒絶してしまう。プランジットの民を傷つけてはならないと、私の心が叫んでいた。
 私の様子に気がついたのか、男は乾いた唇に笑みを刻んだ。

「何だ? お前。プランジットを知っているのか?」
「どうして、プランジットの民であるあなたが王子を探しているのですか? 何故ここにいるとそう思うの?」
「昔、に聞いたのを思い出したのさ」

 ほんの一瞬、男の瞳が悲しげに細められた。だが、迷いを振り払うように、キールの腕を強く捻り上げると、剣を彼の首に向けた。キールの顔が苦しげに歪む。

「っ、痛っ…!」
「や、やめてッ!!!」
「ああ、やめよう。お前が王子の居場所を吐けばな」
「……ッ……」

 私は握り締めたままだった拳を開いた。
 この男は酷くルイスを恨んでいる。そして、彼がアグランドにいると聞いたのを思い出し、やって来た。
 この形相、そして関係のない子供を手にかけてでもルイスの居場所を探ろうとする覚悟を見てわかった。彼は――――ルイスを殺すつもりでここへ来たのだろう。だが、ルイスはこの島にはいない。行方知れずのままなのだ。だが、私がそれを説明してこの男が理解出来るかがわからない。

「その子も私も何も知らないわ。だから、離して」
「……わかった」

 男は私の言葉を聞いて、キールの腕を離した。そして、彼の小さな背を蹴り、前へと進ませた。私は片手を伸ばして、キールを呼ぶ。

「キール…! 早くこっちにっ」
「姉ちゃんっ」

 ――――男がキールのことを解放したかのように見えたその瞬間。彼は無言で剣を
 

 

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