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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 1

   2017年7月11日  

「事実は小説より奇なり、であります」(2017年3月23日、衆院予算委員会で籠池泰典氏)
 

 お分かりか。もはや事実より奇なる小説などあり得ないのだ。電車が人に飛び込み人が犬を噛んだくらいで驚いてはならぬ。

 ともあれ、夜の世界へようこそ。

 

 
「ワーハッハッハッハ! 真行寺君、今日も吾輩の勝ちのようだね!」

 ホテル最上階の窓から漏れ出る光をその仮面に乱反射させつつ、ヘリコプターの梯子につかまった怪盗は、高笑いとともに夜の闇の中を遠ざかっていく。かたや捜査陣の面々は、叩き割られた窓から吹き込む強風にあおられ、なすすべもなくプラチナ仮面の逃走を見守っている。その中には、これまで数々の〝難事件〟を解決してきた名探偵・真行寺内蔵介しんぎょうじくらのすけの姿もあった。

 世界最大のサファイアをまんまと手に入れたプラチナ仮面の乗るヘリは速度を上げ、やがて低く垂れ込めた雲の中へと消えた。

 会場内は、ヘリから撃ち込まれた煙幕弾の名残が靄のように立ち込めていて視界が悪い。口と鼻をハンカチで覆った警視庁捜査三課・特殊盗犯係長の松崎秀直警部は、舌打ちをして忌々しげに吐き捨てた。

「まさかヘリで窓の外から来るとは……。くそっ、プラチナ仮面め!」
「いや、落ち着いてください警部」

 松崎警部が顔を向けると、意外にも真行寺探偵は不敵な笑みを浮かべている。

「勝ったのは我々ですよ」
「何だって!?」

   ・
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 東京湾を見下ろすホテル最上階のイベントルームで2日間にわたり開かれた宝飾品展示会の目玉は、「マダガスカルの奇跡」という呼び名で讃えられる世界最大のサファイアであった。プレスはシャットアウトし、厳選されたビジネス関係者のみを対象とした展示会だったのだが、開会の3日前になって突如プラチナ仮面から犯行予告が届き、関係者は蜂の巣をつついたような騒ぎになったのである。
 
 

前略
 

 「国際Maximum宝飾品フェア20××in Tokyo」主催者どの

 卒爾そつじながら借問す。宝飾品とはいかなるものであるか。そも宝石とは何であるか?
 巨大なだけの宝石を、何ゆえ貴殿らはかくも有り難がるのか?

 婚礼を控えた若き娘が胸ときめかせ、儚い一時の青春を装うのに、どうして巨大な宝石が必要であろう?

 若き娘はそれだけで十分に美しい。

 たとえ現身うつしみは瞬く間に過ぎ去る夢の如きものであろうと、彼女の美そのものは、神の領域において「永遠に」輝いているのだ。
 百年、千年の時に傷一つ付かず、変わらぬ輝きを放つからと、貴殿らはただの石ころを手放しで称賛なさる。愚かなり! 吾輩は断固として首肯できぬ。

 青春の美しさを貴殿らは何ゆえ、デカいばかりの石ころで貶めようとなされる?

 所詮は浅ましい人の欲を凝縮し表面を磨きあげた、糞の化石の如きものではないか。

 よって上記フェア最終日、貴殿らが下にも置かず有り難がるその石ころを頂戴いたしに参る。
 

草々

 

 

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