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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-10

   

 御影と火守は警視庁を見張っていた。目的はある人物が今朝から警視庁内部にいるからだ。

 車を路駐しているため、ある程度なら目立つこともないが政木警部の目にはすぐ見つかった。

 職質に御影たちは応じた。政木警部がどちら側でいるかをはっきりさせた。警察全部が敵というわけでもない。政木警部も味方といった。

 氷室を気にかけている上層部もいることを話しにきたのだ。

 政木警部は警察の上層部の一部が謀反を起こそうとしている。おそらく裏切者もそこにいる。いつかは出てくる。そこを狙って御影たちは張り込んでいる。

 御影たちは雲田らをどうにかしようと行動していた。しかし政木はそれらを追い詰めようと思案する。それには氷室名探偵の力が必要といったが、その氷室は今朝連絡をとったきりで、いまはいないという。

 政木は、いない、という意味に畏怖した。敵に捕縛されたかと。
 

 そこにターゲットが姿を見せた…

 

 御影と火守は日比谷公園内に車を停めてコンビニエンスストアで買ったサンドイッチと珈琲で空腹を満たしながら、寛ぐふりをして警視庁を視野にいれ監視していた。

「大地さんが、おまえの実家にいったようだ」火守のプリペイド式の携帯電話を今朝、携帯ショップで購入した。

「小柴さんたち退院できて、よかったっすね」御影は警視庁を見張る。軽自動車の助手席からかなり離れたところから双眼鏡で覗いていた。「ここからだと死角がやはりできるな」

 二人は警視庁からターゲットが現れるのを待った。氷室の推理力でここに隠れている。それしかない。あいつらは犯罪を犯しているが匿ってもらう必要がある。それは本拠地である警視庁へと返り咲くことだ、と。

 今朝、電話が入った。御影たちはそれでここで見張っていた。

「おまえの家族が護ってくれるならだいじょうぶだろうな」

「火守さんは斎藤さんのことが気がかりですか? ほんとうは実家に送りとどけたい、付き添いたいのを我慢しちゃって」

「あいつだって子供じゃないだろ、実家に帰るだけなら一人でもだいじょうぶだ」

「そうすか」御影は双眼鏡から目をはずし笑みを浮かべた。

「いいから、ほれ、見張れ。警察に怪しまれるなよ」火守はいつになく照れくさそうにしていた。

「だいじょうぶでしょ、職質かかってもバードウオッチングとごまかせる」

 それから一時間して、その場所に訪れた者がいた。まるで最初からそこに、いるとわかっていたようにこちらに歩いてくる。

「政木警部に見つかった」火守は眉を吊り上げて目を丸くさせた。とんとんとノックするように窓を叩く。運転席の窓を開けた。

「あなたたちよくこんなところで、危なっかしいわね」

 公園の茂みに紛れ込むようにして車を路駐していたが、やはり刑事の目にはあやしく映るようだ。

「ここが警視庁を見張るにはちょうどいいって、憎たらしいけど雲田さんが調べたことをおもいだして」御影は歯切れ悪くいった。

 雲田探偵は氷室探偵事務所の中でも技術家だった。超小型の盗聴器、カメラ、発信器などを独自に開発していた。だからといってその素性がわかったからいうわけではない。弁解もしない。彼は警察のどこか優れた技術を会得したスペシャリストだったというわけだ。マニアックな探偵では、あれだけのことができるわけがない。

「やつらは警視庁の奥に隠れている。氷室さんの推理を信じてここにいるってわけ、でも、だからといっていいかもしれない。俺たちを監視しているかもなぁ」

「それはないでしょう、あなたたちの携帯は電源が切れているし、身体にそれらしい装置はついてないでしょ、なんだっけシール型の発信器とかあるんでしょ?」

「はい…」

 御影は探偵社が爆破した際に携帯電話の電源をオフにするよういった。自分たちが狙われているからそれは当然のことだった。

 すぐに全員の身体検査をした。病院に着く前にはないとわかり、連絡のとれない残りの探偵とどうするか考えていたが、あとあと考えると連絡がとれずにいたことはよかったと思う。

 レディースの女たちじゃないが、外部と接触していたら刺客に襲われていたかもしれない。

「情報の漏洩が俺たちの首を絞めることになる」火守は窓の外を見つめながらつぶやいた。「どうであろうと、この戦いには絶対に俺たちが勝たないとならない」

「手枷足枷はないわけね」政木警部はいった。

「あぁ、こっちも体勢は整っている…、政木警部、確認だけど、あなたは俺たちの味方でいいんだよな?」火守は躊躇いながらも、凝視した。

「そんな目で見られるのは心外だわ…」

 御影も静かに見つめていた。

「わかった、もちろん味方よ…、氷室名探偵のことを本当に心配している上層部もいる。全員が敵ってわけではないことだけはわかってほしいの」

「へぇ、そうなんだ…」御影は疑惑を含めながら答えた。

「当然でしょ、上層部の中の一部なのよ…、後ろ暗い何かをたくらんでいるのはね」政木警部はそれが誰かを口にはしないが、御影や火守はもちろん氷室もわかっていることだった。

「いま、そっちはどういう動きなわけ?」御影はいつのまにか立場が同等であるかのような口ぶりだった。

「静かなものよ…、あなたたちのおかげで逮捕できた狩谷と多比良の事情聴取を続行しているわ…」

「氷室探偵社を爆破した捜査は?」御影は一番聞きたかったことだ。警察側がどう動くだろうかと動向が知りたかった。

「新宿署の刑事が捜査しているけど、現場検証して終わった」

「終わった!」火守が奇声をあげた。

「火守さん、大声をあげないでください。政木警部も気づいているみたいですけど、やはり敵側の上層部が指示をだして、適当に捜査して終えろと、そして犯人の追跡はその上層部が預かるとかそんなとこでしょ」

「御影くんも、ずいぶんと鋭い考察ができるようになっているわね」政木警部は微笑んだ。

「冷やかさないでください」

「そんなつもりはないわ、関心しているの…、本当に火守探偵やほかの探偵と堂々に推理をしようとしている」

「おいおいおい、俺と肩を並べたような言い方は勘弁してほしいものだな、まだまだ未熟だよ、手足が欠けたから繰り上げにしただけだ。実力はまだともなっているとは…」火守はそこで言葉を止めた。なぜならここ数か月の御影の働きは、めざましいものがあったからだ。

「いいよ、火守さん俺の評価なんて別に、いまは問題が山積み、火守さんも斎藤さんとまた一緒にいられるようにこの事件に片をつけよう」御影はいった。

 政木警部がここにきた理由がある。やっと本題に入れると思って口を開いた。「いいかしら、私たちはこれから敵側の上層部を追い詰めたい」

「だけどそれにはそうとうな計略がないと…」御影はいった。

「氷室名探偵がいればなんとかなる。援護は私たちがいる。伯田と黒川もいる。任せて…」

「でも、氷室さんがなぁ…」火守が否定するような顔になった。

「なに?」政木の当てがはずれた。

「いません」御影は単刀直入にいった。

 

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