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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

生かすも殺すも匙加減⑤

   

「猫の死体事件」の後も、生ごみがまき散らされている事が数回あったが、朋子は気にしないようにしていた。

ある日、出かけようとしてドアを開けると、そこには大量の洗剤が巻かれていて、朋子は危うく転倒しそうになった。
朋子の頭にまた恐怖がよぎり始めた。

 

「猫の死体事件」から一週間。
あれ以来は、特に変わった事もなく、朋子もお腹が目立つまでは、なるべく出勤するようにしていた。

ある日の朝、朋子が玄関を開けると、酷い悪臭がした。
見ると、玄関前には魚の骨や残飯などがまき散らされていた。

さすがにこれには道雄もムカついたのか
「大丈夫か?朋子?この前の猫の件と言い今回の生ゴミの件と言い、警察に相談したほうが良いよ!」
と力強く怒っている道雄の横で、朋子は平然としていた。
「そんな騒ぎ立てたら、相手の思うつぼよ。」
ときっぱりと言った。
これには道雄もビックリした。
「お前強くなったな。母親の貫禄ってやつ?」
道雄は冗談っぽく言った。
朋子は
「とにかくこのままにしてはおけないから、道雄先行って!私片付けてから出勤するから。」
「ああわかった!じゃあ頼むな。俺先行くわ。」
そう言って道雄は先に出勤していった。

朋子は大きな溜め息をつき、カバンを玄関へ置くと、シャツの袖をまくり上げ、ほうきとちりとりでゴミを集め始めた。
6月も中旬を過ぎ、梅雨時の湿気で余計に悪臭が鼻についた。
智子はまだつわりの影響もあって気分が悪くなったが必死でこらえた。
『絶対こんな嫌がらせに屈するものか』そう強く思い、ゴミを必死に片付けた。
もう少しで片付け終わる頃、隣の306号室が開いて仲良さそうに萩野夫妻が出てきた。
「いつも弁当悪いな。」
「良いのよ。私何もしてないんだから。」
「助かるよ。やっぱり外食だと味がしないんだ。今度病院行った方が良いかな?」
「大丈夫よ。そのくらい心配いらないわよ。ほらいってらっしゃい!」
二人は話しに夢中であったが、他ならぬ悪臭が鼻につき、隣人の朋子に気が付いた。
びっくりした華世子は
「どうしだのこれ?また嫌がらせ?」
「あっ…うん…。でもこれくらいで、私ももう驚かないわ。」
と言うと、萩野圭一は
「朋子さん強くなったね。やっぱり母親になるって凄いね。」
と、道雄と同じような事を言った。

 

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