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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-13

   

 御影たちは政木警部と情報の交換をした。政木警部はあまり驚くことはなかった。後部と日高からそれらしいことを知っていたからだ。

 警察同士でも疑わしきは潔白するまでとまらない。盗聴器をつけて情報を得ていた。

 やはり御影が田場に聞かされた内容と符号している。それは国を裏切るものだ。

 警視正らもどうすればいいか迷って後手になっていた。

 目的の人物を黒川はさらっと言った。最低限の警戒レベルで充分だと思っているところが浅はかだった。

 しかし御影に秘策があった。

 自分たちには氷室名探偵がいるということだ。

 政木警部はその氷室がどこにいるかと問う。言葉を濁す御影だった。それは政木が刑事だからだ。

 

 火守と御影は、小宮山議員のボディーガードリーダーの田場から聞かされた目論見をそのまま話した。

「そういうこと」政木警部の顔に影が差した。

 御影は政木の浮かない顔に疑念が沸いた。いつもならそんな企みは否定するものだ。賛同している様子はない。ということは、もともと知っていたということだ。

「政木警部、なにかしっているんじゃ?」

 御影の問いに政木警部は目の色を変えた。

 伯田も、黒川も、知らないことをしっているという顔だった。

 六本木ヒルズに警官が次々に増えて異様な雰囲気に一般人たちは困惑の顔を覗かせた。

 御影らは、政木警部の話に耳を疑った。

“符号”している。

 御影が雲田と一緒にいた田場という男から聞かされた内容。それは雲田、森谷、川上もかかわっているということ。あまりにも信じられないため、火守は全身の力が抜けた。御影も闘争心を失っていた。この場に氷室名探偵がいたら、どう対処するのか、まったく想像できない。力でねじ伏せるのか、推理をしたところで、迫撃の進行はとめられない。

 雲田たちは警察を、いや国を裏切ろうとしている。

 そして政木警部が話したのは日高理事官と後部参事官の知り得たこと情報だった。この二人がどうやってその情報を知り得たのかは、本山方面本部長の室内に、盗聴器が取り付けられていた。

「雲田さんのようなことを…」御影はいた。

「そうね、でも盗聴器なんて、その辺のお店でも普通に購入できるわ」

「そうなの」黒川は口を挟んだ。

「警部さん」火守がかぶさるようにいった。「後部さんや日高さんは、階級でいうと本山さんが上ですよね?」

「それでも裏をとるのが警察の本望よ」

 御影はたしかにそれが筋であると思った。確実の証拠が出ても、裏付けがなければ重要な証拠も宙に浮く。

「そして最大な黒幕がまさかその上の人物とは…、氷室さんもまだ気づいていないんじゃないんすか?」

 御影は火守を見た。「そうかもな…、だとすると氷室さんも今ごろあぶない橋を渡るところなんじゃないか」

「雲田さんたちを逃したのはまずかったかも、完全に後手にまわっている」政木警部は頭を掻いた。

「やつらの目的を日高さんや後部さんがしっていたのが、腹が立つ。どこかで抑制できたんじゃないか」火守は政木警部を睨みつけた。

 普段ならそんな目つきでは臆することはない政木だが、このときは顔に影が差していた。事の発端はたしかにわかっていながら泳がせていた後部と日高のせいだろう。出世や組織の上下関係が、警視長の牙城を崩せずにいた。

 時を逸していた。手ぐすねを引いて踏みだすこともできずに、とうとう今回の事件まで発展していった。

 太陽は沈み、沈んだことで夜の影が世界を覆っていった。

「ごめんなさいね」政木が悪いわけではないが、頭をさげるしかなかった。

 御影は探偵社を、火守の恋人の斎藤が傷ついてしまったことが、許せなかった。すべてを奪われてしまった。

 あの場所で、探偵として、同じ仲間たちと一緒に、恋人の斎藤と共にこれからも変わらぬ日常をすごしていくことができる。火守にとって最高の幸福のイメージがそれだった。

 そこに雲田、森谷、川上の姿は黒く塗りつぶされていた。

「いま、総理大臣はどこにいるんですか?」黒川が唐突にいった。

「たしかにいまはそれだ。やつらの狙いを話し聞かせたのはある意味ミスだろうな」伯田警部補はいった。

「こちらとしても対抗策が練れますね」黒川が答えた。

「あぁ、警備の人数を集めて検問を鼠が通れないほどに警官を張り巡らさせる。それだけでやつらは侵入できない」

「はい」

 火守が鋭利な目で二人を睨んだ。「お気楽だな、そんな生易しい対抗策でなんになる」

「どういう意味だ」伯田警部補は自分の立案を否定されたようで憤慨した。

「それは最低レベルの警戒網よ、あなたたち」政木警部は部下二人に嗜める。

 いつもやっている警備だ。その発想しか伯田と黒川にはなかった。

「だいじょうぶですよ、やつらの狙いがわかったんだ…、総理暗殺なんて出過ぎたまねをできるわけがない」御影は不敵に笑った。

「ずいぶんと自信満々じゃないか、御影」火守がいった。

「とうぜん、秘策は我にあれ、ですよ」御影はいった。

 

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