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家元 第六部 娘(前編)

   

若狭に帰ってしまった琴乃から久し振りに届いた便りは、琴乃の父の死を知らせる喪中のハガキだった。

志乃は琴乃がどうしているのか、気がかりだったが、夫の圭介から「向こうには向うの暮らしがあるんだから。」と深入りするなと釘を刺されていた。

一方、実の娘、佳代子も娘の真紀子から、和義に踊りを習わせたのは母のエゴで、「お母さんはずるい」と責められていた。

そんな折、料理屋「小寿々」の女将から、琴乃が若狭から逃げてきたと聞かされた志乃は居ても立ってもいられなかった。

「大事な娘を離さないで」と家を飛び出していった。

 

 
訃報
 

「おーい、そろそろこんなハガキが届く季節になったな。」
「え、あら、喪中のハガキどすな。どなたが亡くならはったんどすか?」
「お前にだよ。」

夫から手渡されたハガキは黒い枠取りがあった。

  喪中につき新年のご挨拶をご遠慮させて頂きます。
  夫 三田村孝雄が9月20日に62歳にて永眠致しました。
  本年中に賜りましたご厚情に深く感謝申し上げますとともに、
  来る年も変わらぬご指導のほど宜しくお願い申し上げます。

昭和46年11月
福井県三方郡三方町xxx
三田村 茜

「福井県三方郡って・・あんさんんお知り合いではおまへんか?」
「どれどれ・・ああ、これは琴乃ちゃんのお母さんじゃないか?若狭だよ。いつも『若狭』って言ったけど、住所は三方町なんだな。」
「えっ、琴乃ちゃんのお母はん・・お父はんが亡くなったんやね。」
「62か、まだまだやのになあ・・」

志乃は64、夫の圭介は66、それを考えると、本当に若すぎる死である。

「琴乃ちゃん、どないしておるんかな?」
「まあ、あんまり考えない方がええ。向こうには向うの暮らしがあるんだから。」

昨年訪ねて行った時、やつれた顔で出てきた琴乃の姿はショックだった。着ている物も粗末なワンピースで、家元の跡取りの嫁とはとても思えなかった。

旅行バッグも、なにもかも旅館に置いたままで帰ってきた時、「自分の娘じゃないから深入りするな」と夫から叱られてはいたが、あの姿は忘れられなかった。

 

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