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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第23話「意志は魂を選べない」

   

目覚めた王女の力。これは一体何なのか?

「もっと早く……止めてあげられなくてごめんなさい」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

新章 第23話「意志は魂を選べない」

 

 
 私が危険とあらば、キールなら動くだろうと十分に予想が出来たはずなのに――――。私はまた、選択を間違えてしまった

「キール…!!!」

 私は咄嗟に手を伸ばす。だが、その手は何も掴むことなく宙を掻いた。キールには私の声は届かない。彼はあの男を止めるまで、止まらないだろう。
 顎が外れそうなほど大きく開いた口から、少年は涙と共に怒りを吐き散らした。

「この人にもう……そんな顔させんなぁぁあああ!!!
「っ!」

 私を男の矛先から遠ざけようと、キールは男の腹部へと突進した。その勢いに、男は一歩後ろへ押される。だが、まだだ。まだ男は、咆哮をやめていない。

「ァアアアアアア!!!」
「っ、ぁあ」

 キールが小さく呻き声を上げた。男は乱雑に彼の体を自身から引き剥がすと、また血を吐いた。それ以上無理をすれば、男の体がもたないだろう。キールもそれがわかってしまったのか、一瞬躊躇うように男の様子を窺った。そんな彼を見て、私はハッと我に返る。
 ――――理性を失った者を相手に躊躇ってはならない。油断をしては命取りになる。

「キール!! 何をしているの!? 早く逃げてッ!!」
「…………」
「キール…!?」

 私の願いとは反して、彼は動こうとはしなかった。言葉を発することもなく、逃げようともしないまま、後ろにいる私を守ろうとするかのように、両腕を左右へ広げた。
 私の話から目を背けていた幼い少年は――――先程まで脅えていた彼は、*もういない*。一体何が彼をそうまでさせるのだろう。私は、キールに傷ついてほしくなんてないのに。

「エリザ、もう泣かないで」

 キールは私に背を向けたままそう言った。八歳になったばかりの少年のものとは思えないほど穏やかな声で――――。

「エリザがどこの誰でも、俺にとってはただ一人のお姉ちゃんだよ。優しくて、綺麗で、泣き虫の……エリザ姉ちゃん」
「何を……言っているの……?」
「姉ちゃんは俺が絶対に守る」
「……! 違う……違うの。私は……あなたに守られたくなんかない」
「でもきっと、シア兄も同じことをしたよ」
「違うッ!!!」
 
 私はかたかたと震えながら、首を横に振る。
 違う。私はキールにこんなことを望んでなんかいない。彼にはずっと笑顔でいてほしい。私を姉と呼んでくれた少年を最後まで守りたい。
 

 

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