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家元 第六部 娘(後編)

   

料理屋「小寿々」に駆け付けた志乃が見た琴乃は痩せてやつれ、酷い結婚生活を想像させるに十分なものだった。

志乃と料理屋の女将、京子は琴乃の身の振り方を相談し、離婚手続きは弁護士に任せ、当面は料理屋「小寿々」で仲居として働き、踊りの稽古にも復帰させることにした。

「琴乃が帰ってきた」との知らせは志乃の家族内でも、苑田流内でも歓迎ばかりではなかった。

娘の佳代子も、苑田流の幹部たちも、「次の家元は和義で決まり」、これが揺らぐのか、志乃の考えを探りかねていた。

また、琴乃の離婚調停も難航していた。網元はその力に任せ、琴乃一家を悪者に仕立て上げようとし、解決の術が見つからない。

怒りと悔しさから、京子は志乃に闇の世界の力を借りようと提案する・・

 

 
やつれた琴乃
 

タクシーを降りると、雨が降り出していた。志乃は急いで料理屋「小寿々」の裏木戸を潜ると、勝手口から中に入った。

「京子はん、志乃どす。」
「ここにおるから、上がっておいで。」

居間の方から京子の声が聞こえてきた。

琴乃に久し振りに会えるという喜びなどはない。「逃げ出してきた」と聞かされ、志乃はただただ心配で、逸る気持ちを抑えながら履物を揃えると、家に上がった。

踊りでお座敷に呼ばれた際も、会合で大広間を使わせてもらった際も、いつもお茶を飲んでいたので、この家の間取りはよく分っている。廊下を渡って居間に顔を出すと、座卓を挟んで京子と琴乃が座っていた。

痩せて頬がこけ、顔はやつれていた。化粧どころか、美容院も行っていない髪、スーツを着ていたが、おそらくデパートに勤務していた当時の物だろう、サイズが合わなくなっていた。以前の面影は全くない。

「こ、琴乃ちゃん・・」

あまりの変わり様に志乃は言葉が詰まってしまった。

「せ、先生・・ご、ごめんなさい・・」

琴乃はその場でぱっと座り直すと、手をついて畳に擦りつけるようにして頭を下げていた。

「な、何を言うとるの・・」
「何もご挨拶せずに、勝手に若狭に帰ってしまい・・・」

志乃もハンカチを取り出し、二人とも、もう声にならなくなっていた。

「琴乃ちゃん、もうええ、謝らんでええ。志乃はんは何も怒ってなんかあらへん。」
「琴乃ちゃん・・」

志乃は琴乃の手を握ると、もう我慢できなくなっていた。彼女の背中をさすりながら、両方の目から大粒の涙が零れ落ちていた。
 

 

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