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ノンジャンル

tripper!

   

レッスンを終え、1人でピアノを弾き始めた紗菜依の前に、再び洸が現れる。

ピアノが聴きたいという洸のために紗菜依は鍵盤を叩き、2人の間には優しい時間が流れ始めたかに見えた。

だが彼の何気ない一言に、自分でも不思議なくらいに嫌悪を感じた紗菜依は思わず逃げ出してしまうが・・・・

※登場する団体、店舗、アーティスト名等は全て架空のものであり、実在する人物・団体等との関連は一切ありません。

※作者のクラシックに関する知識が完璧とは言えませんので、矛盾やおかしい点もあるかと思います。ご了承ください。

 

「それで、今度のコンクール、倉谷さんも出ればいいんじゃないかって先生思うんだけど」
「嫌です」
 きっぱりと答えて、紗菜依は譜面を捲った。個人レッスン担当の女教師は、弱りきったような表情で懇願してくる。
「お願いよぅぅぅっ!うんって言ってくれなきゃ、私が学長先生に怒られちゃうの!助けると思って、ね?」
「だから、コンクールは嫌なんですってば」
「首席の生徒が何にも出ないんじゃ示しがつかないのーお願いだから1つでいいからぁっ」
 息つく間もなく主張してくる教師をあっさり無視して、鍵盤に指を走らせる。
 先ほどと違い、完璧なピアノ・ソナタ。
「しかもこんなに弾けるのに難しい曲はやってくれないし、せっかくの腕が泣くと思わない?才能を捨てるのは罪悪よ。犯罪なのよ!」
「じゃあ先生が出ればいいじゃないですか」
 あくまで淡々と返して、紗菜依は目の前の旋律に集中する。
 流れる音に身を任せるのは心地よい。雑念を追い払って弾き続ける。
 やがて時間が来て、教師は諦めたように告げた。
「・・・・はい、結構です。今日のレッスンはここまで・・・・」
 ありがとうございました、と返して、防音室を出ていく教師を見送る。扉が閉まったのを確認して、紗菜依は鞄から別の譜面を取り出した。

 

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