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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-15

   

 国会議事堂から安賀里総理を誘拐した三人の男たち。ベンツ車に乗せて中央玄関から堂々と連れ出したのだ。

 総理も無抵抗で連行された。こいつらの目的はあまりにも身勝手なものだった。

 今、国家が抱えている問題点に割りこもうと総理に協力、もしくは玉座を空けてもらうため誘拐した。

 倉庫内で監禁、総理の眼前に姿を見せたのは本山だった。ほかにも数名の者がいた。

 雲田が口を滑らせ、目的の概要を話す。但馬が咎めるも、すでに出た言葉はもどせない。

 ここにいるのは個人が生きるための法案。それが“個人主義法”なるものを麻田が草案した。

 次の玉座には小宮山を立てようと、革命的テロリズムのために集まったメンバーだった。

 だが、罵られた本山が総理の胴体めがけて蹴り上げた。すると妙な違和感を足の裏が感じとった。

 

 陽が沈みかけた夕方。空はすがすがしい青さが白みはじめていた。

 もう五時間は過ぎていた。なんら国会議事堂では変化はない。静かなものだった。

 国会での議論に白熱しているテーマが憲法の改革だった。日本国憲法の改編を口論している最中だろう。

 黒いベンツ車が緩やかに走行し、国会議事堂の正面から出ていった。乗車しているのはもちろん安賀里総理だ。どうやら答弁などが終わったとみえる。どっしりと不動な面構えで後部座席に乗っていた。

 運転手、助手席には秘書、安賀里総理の横にはもう一人秘書がいる。いずれも男だ。

 むさ苦しい車内だが、誰もこの違和感に気づかなかった。取材をしにきていた記者もカメラマンも、ほかの議員らも頭をひねる者がいたかもしれない。だが、呼び止める者はいなかった。

「総理、ご苦労さまです」助手席の秘書がいった。

 安賀里総理はむすっとしかめっ面で険しい眼光を運転手、助手席、左横の男たちを流すように見ていた。

「そろそろ言ったらどうかね、だれだきみらは…」総理は血相を変えた。

 帽子をかぶっているため運転手の顔は見えない。「すみません安賀里総理、手厚くもてなしますので、ご勘弁を」

 バックミラー越しに運転手の目を睨みつけていた安賀里総理だが、目の奥には敵意に満ちていた。

「さすが日本の権威だ、この状況に怯むどころか隙あらば刃向かってきそうな目をしている」助手席の男が観察するようにいった。

「無駄口は叩くな、おまえは前をむいていろ」後部座席の総理の横の男が命じた。

 三人の中で関係性が助手席の男が一番低いことがわかった。となるとやはり運転手が二番手、この中で決定権のあるのは総理の横にいる男だと推察できる。

 総理が捕らわれた敵のリーダーである。

「なにが目的だ?」総理はゆっくりと探るように問う。

 総理の真横にいる男がスマートフォンをいじりながらいった。「総理、あなたに会わせたい人がいる。それまで黙っててもらろう。直接の相手はその人だ」

 リーダーと思われる男は社内ではいっさい黙する姿勢だ。

 総理は身動きもなにもしない。それだけの危機的状況ではない不動の構えをとっている。

「わたしは誘拐されたというわけか」

 助手席の男がにやりと笑いながらいった。「そういうことだ」

「そろそろ目隠しをしていただこう」リーダーらしい男が少し手荒く総理の顔に目隠しをさせた。そして口にガムテープを貼った。鼻で呼吸はできる。両手首を腹の前でロープで結びあげた。

「それじゃ少し裏道に入って逃げまわろうか」運転手の男がいった。

「総理の梱包は終了だ。もう話せない。手首も拘束した」

「了解」運転手の顔がきりっと引き締まった。安全運転よりアクセルを踏み込んだ。

「どうせ、警察にはまだ気づかれないだろうな、カーチェイスしてみてぇー」助手席の男は軽口を叩いた。

「そうか、ならおまえは降りろ」後部座席から辛辣な言葉が飛んできた。

「冗談だよ」

「黙れ、舌かむぞ」運転手からも檄が飛ぶ。

「遊びじゃない、これはこの先の日本を変えるための革命だ」総理の真横で小宮山議員のボディーガード田場が言った。

 運転手は帽子を脱いだ。雲田だった。

「はいはい」ずっとふざけた態度をとる助手席の男は、川上だった。

 田場は前方の二人と相いれぬ関係だ。助手席のシートを蹴飛ばしたい衝動を数度押しとどめていた。

 

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