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SF・ファンタジー・ホラー

雨の檻に囚われた夏 前編

   

5年前行方不明になった身内の真相を探るため、5年ぶりにその時と同じ場所を訪れた3人の幼馴染。
そこに下心がある同級生が加わり、5年前と同じ行動をとると、突然の雨が降り出す。
彷徨った先に建つ洋館で雨宿りをすることになったのだが…

 

 今年の夏は平年並みの暑さではあったけれど、時々気温が極端に下がったり上がったりと不安定な日もあり、それが結果集中豪雨を招く結果にもなっていた。
 そんな不安な夏と知りながら、私たち4人は夏の思い出つくりとしてキャンプ場に来ていた。
 思い出つくりと思っていたのは多分大学に入ってからの友達、八木圭以子だけだと思う。
 私と残りのふたりには思い出つくりとは建前で、とある事件の真実が知りたくてやってきた。

◆◇◆◇◆

「依ちゃん……」
 近くの川で炊飯用の水を汲んでいた私に声をかけてきたのは圭以子。
 深谷依子という私の名前から、親しみを込めて依ちゃんとよく呼ばれていたので、彼女もそう呼んでくれる。
「圭以子……どうしたの? 劉さんと一緒だったんじゃ……」
「その劉さんが、依ちゃんを呼んで来いって。真人がいたっていえばわかるって。どういうこと?」
 真人がいる?
 その言葉を聞いた私は耳を疑った。
 それと同時に水汲みを途中で投げ出しその場から駆け出した。
 当然理由を知りたい圭以子も後に続き、乗ってきた車から荷物を下ろしていた平祐くんに声をかける。
「ねえ! 真兄(まさにい)がいたって……劉さんが」
「真人が? マジで? ……って、依ちゃん、待てって俺も行く」
「ちょっと二人とも、どういうことか説明をしてよ」
「説明なら後でする。劉さんはこっち?」
 説明を強請る圭以子に私は先に劉さんの向かった方を聞く。
 私は炊飯用の水汲み、平祐くんは荷下ろし、圭以子は劉さんが好きでこのキャンプ中に告白する気でいたからなんとかふたりになる機会を窺っていた。
 劉さんが薪になるものを探しに行くと森のある方に行く姿を私は見ていたし、それを追いかける圭以子も見ていた。
 それでも確かめたのは、今すぐ圭以子の質問に答えられない事への申し訳なさからだったと思う。
 森の入り口から少し入ったところで劉さんに追いつく。
「真兄を見たって本当?」
 私の問いかけに彼は力強く頷く。
 だけどその場所を見た平祐くんは浮かない顔を見せた。
「劉、マジでここ?」
「……? 僕が嘘を言っているとでも?」

 

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雨の檻に囚われた夏 第1話第2話

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