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家元 第七部 危機(前編)

   

琴乃は稽古に励んでいたが、4年のブランクは思っていた以上に大きかった。だが、志乃も京子も応援してくれる。どんなに辛くてもやり遂げねばないと決意を固めていた。

そして、難航していた離婚調停も、昭和47年12月下旬、ようやくまとまった。さあ、次は、新たな目標、師範代をめざし稽古に励むだけだ。

この一方で、苑田流は創設以来の危機を迎えていた。

事の発端は、古参の師範代、田中康代が地方新聞に掲載された高橋真由美のインタビュー記事にクレームをつけたことだったが、感情的なしこりのある二人の口論は、分裂騒動に発展してしまった。

志乃と最古参の師範代、鏡佐知代は収拾に走るが、雑誌記者に騒動を嗅ぎつけられ、高橋真由美は責任を取って苑田を去ることになってしまった・・

 

 
焦らんと
 

「ふぅぅ・・あかん・・」
「そないに焦らんと。」

11月、秋が深まり、冷え込む日も出てきた。

琴乃は料理屋「小寿々」の営業前の午後1時から3時を踊りの稽古時間にあてさせてもらっていた。

「足が遅れる・・」

踊りに戻って5ケ月経ったが、4年のブランクは大きい。自分が思うようには体が動かない。

その辛さは志乃が一番よく知っていた。佳代子を産んだ時、産前産後、それに育児期間を含め、1年半ほど、稽古から離れていたが、そのブランクは想像以上に大きく、なんとか体が動くようになるまで1年以上かかった。

「もう一度・・」
「止めときなはれ。」

踊りの勘を早く取り戻したい気持ちは分るが、琴乃は焦りから余計に手足が揃わなくなってきている。これ以上続ければ型が崩れる。

「ありがとうございます。」
「ご苦労はん。」

琴乃は納得できず、汗を拭いながらも、手で所作を繰り返していた。

「うちはずっと一緒やから、半年、1年と焦らんと、2年、3年としっかりお稽古して体を戻していくんよ。」
「はい。」

志乃の励ましが琴乃の心の支えだった。

  辛くても、(新しい)おかあちゃんとなら我慢できる・・

「ありがとうございました。」

琴乃は料理屋「小寿々」に帰っていった。

 

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