幻創文芸文庫 (β)

小説好きの創作小説を無料配信*スマホ対応

ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-17

   

 雲田を捉えた火守。ナイフを首にあて動きを封じた。森谷は人質を取られれば動きはしない。

 だが、当てが外れた。森谷は静かに忍び寄りナイフの刃を素手で握りしめた。

 火守はナイフを奪われ、雲田の後頭部が額に激突。火守は後方へ吹っ飛んだ。

 拘束に失敗した火守。だが、御影は川上を打ち破り、ついに恩師森谷へ牙をむく。

 御影の体術の速さについていけない森谷は防戦一方となり倒した。ついに森谷が本性をみせた。それは以前見た姿ではない。

 以前見た姿さえ、一枚皮をかぶっていた姿だった。どこまでも狡猾な男、それが森谷だった。

 

 森谷の右手が握りしめられた。まるで感触を確かめるように、ゆっくりと雲田へ近づき身動きを封じられて脅されている火守のナイフの刃を、森谷の右手が静かに滑りこんだ。

 火守はなんら気配を感じず、いつのまにか刃を握られていた。「なに、離せ…、なにしている?」驚いた。鋭利なナイフを握りしめている。握った手の中は血まみれになっているだろう。

「どうかな、俺にとってこの姿にはナイフぐらいじゃ意味をもたない、忘れたかね、火守探偵」森谷は口調が変わった。

「しまった、そうか、全身着ぐるみ野郎だったな、あんたは!」

 火守のナイフは奪われた。雲田は封じられた身体を後頭部で火守の額をぶつけ弾き飛ばした。後方へと倒れた火守は額をおさえながら目の前を確認した。

「ちっ、この策はうまくいかなかったか、御影すまん、失敗した…」

 雲田は解放された。動揺ひとつせずに、火守のことはもはや気にもとめていない。森谷の変装の疑似体躯によって、かつて氷室探偵社で同士として活動していた仲間だが、そういった意味でもやはり信頼は築かれていたようだ。

 御影は川上の腕を解き放った。「この男はもう動けそうにないだろ、腕の痛みが全身の神経まで響いているみたいだな。そのまま寝ころんでいろ、猫野郎…、そして次はあんただ、森谷、このニセモノ野郎」

 森谷は黙ったままだった。よく笑い、よくしゃべる陽気なおっさんだった。それがいまでは寡黙な木偶人形となっている。

「なぜ、我々の行動を阻む、おまえたちはもうこれまでどおり探偵業をしていればいいだろ、どこか別のところでな」森谷の視線は御影の足元に落ちていた。まるで目を合わせるのが本能的に拒絶している。

「ふざけるなよ、おまえらがいたから楽しかった、それだけだ。それを壊しやがって、償いがたりねぇーんだよ」

 動じることなく御影は瞬発力を活かして森谷に襲撃する。右、左、後ろ、また左、右、体勢が前屈みになったところを前から一蹴した。

 森谷は御影の瞬発力の攻撃についていけてない。

 雲田の表情に影が差した。その動きに誰もついていけないと悟った。「あいつ、さっきよりも速い…、どういうことだ」

 森谷は後方へと転がるように吹き飛んだ。

「着ぐるみマンはよく転がることだな」御影は勝ち気だった。

 師を乗り越えた。惨めな恩師を手打ちにしている御影もまた苦心している。しかし氷室探偵あっての探偵社だ。再び結成されるときのため目を覚まさせる必要がある。もどってくるかはわからない。ここで手を抜くことはいっさいない。御影は裏切られたことよりも自分自身が悔しくてしかたがない。腹が立っていた。誰よりもそばにいたのは探偵社の面々だ。

 その中の一人として、なんら気づかなかったと思うと、なにが“探偵”だ。やはり、まだまだ“見習い探偵”だ。と苛立った。浮かれていた自分が憎たらしく、そして森谷たち三人を粛清するために拳を振っていることに嘆かずにはいられない。

「くそっ……」森谷はうずくまっていた。

「雲田さんよ、次はあんただ。逃げるか、それとも俺と闘うかだ」

 御影は手は抜かない。ここで完全に決着をつけるつもりでいる。覚悟の目をしている。雲田はその気迫に押されていた。なにしろ体術ではあきらかに御影が勝っていると自覚さえしている。

 雲田にできるのは細かい作業だからだ。武器や装置なるものを創作する能力のアイアンマークだけだ。それは持続の集中と精神面の強さであって肉体的な強さではない。この状況で雲田の能力は無意味だ。

 ちらっと御影は一瞥した。もぞもぞ動いている森谷だ。その動きは奇怪すぎて御影ですら目を細めていた。

「なにしているあの男…、痛みなど着ぐるみのおかげで無効化だったな、ということは…」御影ははっとした。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
-, , , ,


コメントを残す

おすすめ作品

怪盗プラチナ仮面 7

   2017/08/22

ロボット育児日記19

   2017/08/22

アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第26話「消えない思い出と消せない日々」

   2017/08/21

見習い探偵と呼ばないで! Season20-21

   2017/08/21

美しき人

   2017/08/18