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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-19

   2017年8月14日  

 地下へと近づく無数の足音。それは敵か味方。御影たちの前に現れたのは、国家転覆をもくろむ本山らだった。

 優勢に雲田たちを追い詰めていたというのに、窮地に陥ったのは御影と火守だった。

 万事休す。だが御影の熱意は冷めてはいなかった。一人でもこの窮地を打開するつもりだ。

 安賀里総理や、警官隊に政木警部たちも駆けつけた。阿澄らを捕獲して…。
 
 

 最後に言い放った安賀里の言葉、それは本山にとっては残酷なものだった。

 本山か安賀里か、二人の言葉は多勢に無勢の警官隊を味方にするための心理合戦がはじまった。

 そして安賀里総理の素性が明らかに…。

 

 一触即発の御影、火守と本山率いる田場らボディーガード五名に雲田と化けの皮が剥がれ倒れた森谷と川上。完全に分が悪い。

「ここからってときに」御影は警戒心が高まった。攻撃性よりも今は平常心だ。

 おそらく体術だけなら御影よりも火守の方がまだ上だろう。それでも屈強なボディーガード五名は痛手だ。闘っているうちに森谷と川上だって回復しかねない。

 火守は作戦を練ってこの窮地を打開するもしくは逃走する方法を模索しようと御影へ視線を移した。

「どう考えてもだめそうだな…」火守は御影の顔を覗くと核心した。ひとりでも全員ぶっ倒すつもりだ。気迫があふれでている。負けるとわかっていてもだ。それだけの有り余る力が抑えきれないのかもしれない。

「勝算ゼロだぞ、まったくしかたない、付き合うしかないか…、俺一人逃げても恨まれはしない状況だがな」

「いいんすよ、べつに逃げても、俺がしんがりしましょうか」御影は笑みを浮かべていた。眼は殺気がこもっていた。

「こわいねぇー、玉砕の覚悟は微塵も尊敬できないけどよ」

「ちがいます、俺は雲田を倒す。ついでに余計なやつらを排除するだけですよ」

 余計なのはボディーガード五名と本山のことをほのめかす。

「あっちが本腰だろ。余裕な顔をするなよ、崖っぷちは俺らの方だ」火守は真剣な顔つきに変わった。

 御影は火守の顔を見て心の奥底から燃え滾るような笑みをこぼしていた。

「まちなさい!」どこからともなく声を張り上げたのは安賀里総理だった。

 硬い革靴の裏底の音がやんだと思ったら警官隊に護られながら連れてこられたようだ。

「どうやら最終地点のようね、ここが…」政木警部も阿澄を引きずりまわしながらおりてきた。

 伯田と黒川も、木島と松川に手錠をかけて連れてきた。いつになくスーツがボロボロになっていた。

 御影と火守が田場ら五名のボディーガードたちと乱戦状態に入る前であったが、多勢に無勢、警官隊に取り囲まれて状況はさらに一変し、本山らは動けず悔しがっていた。御影と火守の足止めは成功した。

 御影と火守は大暴れしようとしていたが、安賀里総理の登場に拳をひっこめた。

「これで終わりにしよう」安賀里総理がいった。「打開策はない」

 本山の出方を警官隊は睨んでいた。どうでるか、それとも両手をあげるか、武装された警官たちに取り囲まれて怯んでいるのは一目瞭然だった。

 本山はそれでも聞かずにはいられなかった。「あんたやっぱり安賀里総理ではないな、総理ならすぐに逃げだすはずだ、ここは危険区域地雷原の真っ只中だぞ」

 安賀里総理は後ろに手を組みながら堂々とゆっくりと歩を進める。

「あなたこそ、こんなところに来るとは意外でしたな、きみたちの取り巻きに任せればいいものを」

「それは…」本山は口ごもった。言えない事情があるようだ。

「代わっていいましょうか、本山方面本部長、あなたがここにきたのは、わたくし安賀里総理の命を最終的に決定する判断者としているのでしょう。つまりがこのテロリスト一派を牛耳る司令塔だ。しかしほんらいはそこのボディーガード五名、元探偵社の三名、そして記者に扮する三名の方たちを従えているのは、だれですか?」

 安賀里総理はなにかをつかんでいる、御影は火守にアイコンタクトをとった。

「あのひと捕まっているときになにか情報を得たのか」御影はぼそっといった。

「さすが、抜け目なしだ」火守がいった。

 安賀里は話を続ける。「こんなところにこなければ寿命を縮めずにすんだものの、古き時代から今日までのあいだ、よくもまぁ緻密に計算してのぼりあがったものだ」

「どういう意味だね?」本山は目を細め、この男に違和感を抱いていたが、警官隊や警視庁の刑事がいてはもう逃れようがない。むしろなんとかそいつらをこちらに引き寄せようと考える。

「本山さん、あなた方がなにを狙っているのか、その目的をそろそろ聞かせてみたらどうですか? 警察関係者のあなたの本性をここでみせてみたらいかがですか?」

「なにをバカなことを、おまえたちその総理はニセモノだ。わたしにはわかる。その男こそ逮捕されるべき者だ。野放しにしたらなにをするかわからんぞ、逮捕しろ」本山は指を指し示すが、警官はピクリとも動かない。じっと本山をみつめていた。

「なにをしている!」

「ダメですよ、本山さん、あなたのいうことを聞く者はひとりもこちらにはいません」安賀里総理は両手をあげた。それはもう戦闘の意思はない。だが、あなたもお縄につけと示唆している。

「なんだと?」本山は目を細めた。

「この私がニセモノといったのはどうしてですか?」

 本山は、安賀里総理を蹴りとばしたとき、なにか違和感を足裏が感じとった。

「それは…」ぼそっとつぶやいた本山だった。それは自白に等しい。

「そうです、あなたが私を足蹴にし、命を狙っていたのは安賀里総理です。それはあなたたちの真の目的を果たすために安賀里総理は邪魔だった。だから、かどわかしここに監禁したが、殺すか脅迫するか、まだ考えていた。なにしろ予期せぬ事態が、ここではなくべつのところで今、起きているからだ」

 本山一人だけ唇を結び蒼白な顔になった。

 

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