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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-20

   2017年8月16日  

 安賀里総理の正体は氷室が変装したものだった。

 本山は雲田ら元探偵たちが裏切ったのかと問い詰める。だが、雲田たちも驚いていた。

 探偵社を離れ、やりたくもない誘拐に手を貸し引け目を感じていた雲田らは、探偵の勘すら鈍ってしまった。

 総理誘拐に国会議事堂内に侵入したこと、その行動の行方は御影が川上に雲田お手製の発信器を取り付けていたということだ。

 御影はいう。見習いから探偵になり、いまできる最大の力を駆使して躍らせていた。

 黒幕の麻田、小宮山を逮捕できるだけの証拠を手にいれた。

“個人主義法”なる草案、本山の捕縛。草案を練ったのが麻田と小宮山。その事実を掴んだのであればもはや権力や立場を利用して逃げることはできない。

 これですべてに決着がつく。

 

 本山は憤慨としていた。誘拐した田場や雲田と川上も度肝を抜かれ呆然となった。

 特に長年探偵社でそばにいた雲田と川上は国会議事堂に、氷室がいることに気づかなかった。安賀里総理に成り代わっていたことに。

「まさか、おまえら、裏切っていたのか?」田場が二人に凝視した。

「いや、マジで気づかなかった」御影に腕を痛めつけられて床に這いつくばっている川上は目を大きくさせていた。

「俺も、信じられん…」雲田も寝耳に水だった。

 氷室は不敵に微笑んだ。

「どうやって入れ代わったというんだ?」本山は厳しい眼差しをむけている。

「変装が完成したあと、わたしは水桐探偵とともに国会議事堂へむかった。そこで大地探偵とも合流した。すでに大地くんには国会議事堂の裏口から入れるように手は打ってもらった。なぜなら、このわたしが安賀里総理を助けるために来たのだからね。総理の取り巻きは、事実関係を確認後すぐにわたしを隠すように潜入を許してもらった。内部に嘘の情報を流し侵入者をおびきだすためにね。雲田くんらもそれに脅されたというわけだ」氷室は淡々と事実を述べていく。

「嘘の情報だと?」田場は思い当たるところがあるか記憶を思い出そうとしていた。

「俺らが入りこんだときに総理がどこにいるか話してたやつらがいたが、あれは総理のボディーガードが嘘の情報をいっていたのか」雲田は踊らされていたのをやっと理解した。

「本物の安賀里総理はこの事態をまったくしらない。今も普通に総理として国のために働いてくれている。なんら不安を持たずにな。きみらが変装したわたしのところに現れて、かどわかしていった」

「氷室さん、ちょっといいですか」川上が腕を押さえながら立膝をつき言った。

「なんだね?」

「我々が侵入しているのをどうやって知ったんですか?」

 氷室は川上を見下ろしながらかつての同僚を完全に否定している目をむけた。

「そっち側についてしまうと、探偵としての勘が損なわれるようだね、川上くん」

「なに?」

 政木警部ははっと思い出した。「御影くん、あなたと火守探偵は六本木ヒルズで雲田さんたちと遭遇していたわね、あのときになにかしていたの?」

 御影と火守はうつむいた。勝ち誇るように肩が震えていた。それはほくそ笑んでいたからだ。

「正解ですよ、政木警部…相手が雲田さんたちだ。裏切り者の特技を利用させてもらいました、川上さん、あなたの衣服に雲田さんのポイントマークを貼りつけさせてもらった」

「盗聴と発信器のシール型か、てめぇー」川上は御影を見くびっていたようだ。

「言っておきますけど、今はもう探偵なんですよ、見習いではない。できるすべてを駆使して、全力をだしきらないとあなたたちには勝てない」御影は堂々と佇み、顎をつきあげながら言った。

 氷室は闊歩しながら成長した姿の御影に笑みを送っていた。「あなたたちの動向は逐一報告を受けていた。まったく気づかなかったのは、雲田さん、森谷さん、川上くん、あなたたちが“安賀里総理誘拐”という大仕事に真剣に向き合っていなかった。それが敗因であり氷室探偵社で培われた直感を鈍らせてしまった。馴染めない議員のボディーガードさんたちとうまく連携がとれなかったようですね。すべてこちらのシナリオどおりに踊っていただきました。一網打尽作戦…、御影くんの策もお見事ですよ」

 御影はアイコンタクトを交わし、微笑み返した。

 

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