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ノンジャンル

お稼ぎさん

   2017年8月16日  

 近未来、人口の減少や財政難によって崩壊していた自治体が次々に、不自然に復活するという出来事が起きた。
 財政再建に貢献した人々は「お稼ぎさん」と呼ばれていた。国や地域によっては、彼らの受け入れを重要な課題の一つととらえるところもあった。
 しかし、どんな人がいかなる手段で金品を稼いでいるのかだけは、あらゆる手を尽くしても分からなかった。
 もちろん、その奇妙さにメディアは飛び付いた。ライターの篠崎 純也も、一攫千金を狙い、密着取材を敢行していったが……

 

「要するに、だ。我々月刊ホットビジネスとしては、何を置いてもこれに狙いを定めなければならない」
 編集長の日下が、使い古しのホワイトボードをばしんと叩いて言った。
 思わず肩をびくりとさせる人もいたが、篠崎 純也や、他のほとんどのライターたちはスルーした。日下のリアクションの大きさにはもうすっかり慣れっこになっていたからである。
「『お稼ぎさん』ね。俺らが原稿を書いてきたのはオカルト雑誌ではなかったはずですが」
 ライターの一人が不審の感情を隠そうともせず言った。彼女とのデートをうっちゃる羽目になって出た会議の議題がこれ、となれば、不満の感情も分からないではない。
「しかし、現実だ」
 日下は持論を強調した。
「西スラェラシン共和国、ザミニヤ、離脈一帯……、税金も支払えずに困窮していた都市や地域が急に豊かになった。貴金属や石油が出てきた、とかでな」
 日下はそこまで言って首を左右に振り、「産出など有り得ない地域なのにな」と呟いた。
 だが、こうした地域は今や珍しくない。まったく理由も定かでないまま、富を手にし貧困から脱した人たちは無数にいるとされる。
 皆が豊かになることはもちろん良いことだ。
 しかし、「良かったですね」で終わってしまってはライターという職業は成り立たない。世界中の多くのメディアは何とかして秘密をつかもうとしているし、篠崎たちにしても例外ではなかった。
 さしあたり「お稼ぎさん」が近くにいるとされると言われる地域に張り込んで、バッティングするチャンスを待つしかないという状況だが、他の記事を飛ばしても追うべき価値がこの話にあることは明らかだった。
「うまく情報を掴むことだ。とにかく必要な分がまとまれば書籍かブックレットにして出版する。それで我々の負債は返せるし、諸君らへの原稿料もたんと弾める。頼んだぞ」
 成果の見えない会議を、日下はこう締めた。

 

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