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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで! Season20-21

   

 とある料亭で、麻田と小宮山は密会をしていた。個人主義法が生まれた経緯を麻田は思い出話のように話す。

 奥の手の駒が盤上へ投げられた。シナリオはすべて麻田にあり。

 本山らが逮捕された翌朝。護送される狩谷に襲撃をかけた。狩谷の脱走を手伝った若者たちは小宮山のところでボランティアをしている。

 襲撃は手筈通りうまくいった。すぐに最終プランへ移行するよう狩谷に告げる。
 
 

 国会議事堂に帰り道のない奇襲をかける。狩谷がきた以上、国会が血で染まる。

 同行するのは若者だけだった。若者たちは中原の背中を追って議員になろうと夢見ていた。しかし狩谷が中原を殺した。

 共に国を変えるため、この奇襲はぜったいに成功させないとならない。玉砕覚悟の若者たち、狩谷と同じ意思を継ぐ者として。

 総理大臣室の扉を開くと総理がいた。狩谷は即、銃口を向けた。

「これですべてが終わる」
 
 

 迫る、クライマックス。

 

 総理大臣を誘拐し暗殺は、日本の頂点の座を空けてもらい、その席には小宮山に就任させ日本の法律を変える目的がある。もしくは総理の地位を利用し草案が通りやすく協力させることを説得させる。無駄な血は流さないことも本山は考えていた。

 麻田や小宮山は簡単に説得に応じるとは考えていなかった。

 二人の草案は、警察にとっても有意義な法律となり、長年の思いを込めて悪事を正当化する。そのための努力を惜しまず今日にいたっている。

 今ある法律は悲しみが伴う法律だと訴えている。だからもっと合理的で個人を活かすための法案。

“個人主義法”を成立させる。

 具体的には、個人に負荷がかかったときに個人が死なないですむ法案だ。どんなことが起きようと、その個人が恨まれようと憎まれようと、罪深きことをしたとしても、全国民から迫害を受けるに値しようと、救済される法だ。

 これまでの日本の法律では護りきれない個人を放置していたこと、日常では周囲から白眼視され孤立化していたこと、再起を望んでいるがそれができない世間の冷徹さに、蝕まれていく様を護るための法案だ。
 
 

 とある料亭の一室。

「矛盾が過ぎるといまだに思っている」小宮山は言った。「法案自体、国会で通るわけがない」

「だから通るように邪魔な者を排除させているのであろう。その担い手が狩谷だった。このさきもこの夢を現実にさせるためには、氷室くんの存在が邪魔となる」麻田は酒を飲みながら二人だけの世直しに花を咲かせていた。

 小宮山は頷いていた。「たしかに有能すぎる個人は時に脅威になる。すべてを屈服し退かせる。それだけの力が彼にはあるな」

「砂場で山崩しをしたことがあるか?」麻田は唐突に稚拙なことを言った。「それと同じだ。どんな力があろうと、彼の周囲をどんどん削り、か細いだけの彼に首輪をつけようっていうんだ。彼の頭脳だけは買っているからね。むしろ使い勝手がいい代物だ」

「いつから、そんな下劣な画策を?」

「狩谷 一真、その父親が自分の妻を殺そうとしたときに、個人が表で生きるすべを模索したとき、日本の法律では誤ったとはいえ、救済できないということだ。その人間性自体に問題はない。誰にでも起こりうる些細な失敗だ。しかも予想だにしていないことに本人ですら憤慨している。そんな愚かしいことに一生を無駄にさせてたまるか、わたしはそれが我慢ならなかった」麻田は核心を話す。

「そのために“個人主義法”を…、中原はその代償ってわけだな」小宮山はちらっと麻田を一瞥した。

「いっただろ、代わりはいくらでもいる。この法案を成立させられたら、世の犯罪は犯罪であって犯罪ではなくなるというものだ」

「むりがありすぎる」小宮山はさすがに滑稽に感じ高笑いをしている。

「いったろ、むりを正当化、肯定できる世の中に、これから塗り替えていく時代なんだ。あなたを筆頭にして」

 麻田は自分をも犠牲にしてこの法案を通そうとしている。小宮山との温度差が少し肌で感じた。まさか自分の配下の者が利用されていたことに気づかなかった。それでも二人は狩谷の両親の事件のことから世に矛盾を感じずにはいられなかった。

 ちなみに小宮山は当時、それなりに手腕のある弁護士だった。狩谷の弁護をしていた。結果は表の世界で生きていくことができなくなったが、それでも狩谷の家屋は息を潜めるように暮らしてきた。世のために国家の裏を走りながら支えてきた。

 麻田は悔やんでいた。警察としての職務というより、個人を護れることができなかった。

「もうすぐなんだよ、小宮山」麻田の携帯電話に着信が入った。「やつらは全員逮捕されたか、本山まで…、田場もか、ふん、まぁかまわん、もはや時間の問題のようだな」

 麻田警視監はすでに次の手を打っていた。計略はなにひとつ変わりはしない。

「どんな方法で?」小宮山は訊ねた。

 携帯電話を耳に当て直した。「あぁ、わたしだ、そうだ、狩谷を護送するのだろ。警備は手薄でもかまわん。おとなしくしているのだろ…、それでだがな、適当なところで襲撃に合わせる。やられたふりをして逃がすことだ。いいな」

 向かいに座る小宮山は黙ったままだった。麻田はにやりと笑った。

「逮捕されようと、いつだってこのわたしが外にだして利用できる。シナリオはすべてわたしにあるんだよ」

 

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