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なな★しき ~次元管理員 七尾と志紀子~ 第15章 真実を知る時

   

志紀子は知ってしまう。

(お父さんとお母さんは、【レッド・ディメィア】に殺されたんだ!)

悲鳴を、叫びを上げてしまいそうになったのを懸命に堪える。それだけで必死だった。

心乱す志紀子に、七尾の手は届くのか──

 

「──これで最後ッ!」
 舞うような志紀子の一閃が振り下ろされた瞬間、【レッド・ディメィア】陣営との決着はついたようである。
「こっちも済んだぞ」
 雑魚たちの相手を志紀子に任せ、陣営の中心へ突入した七尾が連れてきたのは、手錠をかけられた中年の男だった。
「誰?」
「オリバー・サイボルトの補佐役らしい。この世界で雇われた、次元渡り能力者ではないそうだが」
「ふぅん?」
 志紀子が興味あるのかないのか、と曖昧な態度で一目した後そっぽを向くと、それは男のシャクにさわったようだ。
「貴様が宮小路志紀子か。……フン。少し秀でた能力を持つからと言って、いい気になるでないぞ。今にオリバー様が、グランバルとの決着をつけて──」
 すると志紀子は、目を丸くして男を見た。
「……って。気づいてなかったの、あなた?」
「は?」
 七尾も呆れたと言いたげな顔を隠しもせず、男に告げるのだ。
「オリバー・サイボルトは、この陣営を見捨てたんじゃないか?」
「……は?」
「【レッド・ディメィア】は、足手まといと判断した時点で即見限る。そんな組織だって、多少でも関わっているなら知っているだろう?」
「それも、今回の襲撃の最終目的を、この私《宮小路志紀子》に切り替えた時点で、能力者ではないあなたを助けるなんて『ムダ』だと判断されていると思うよ?」
「だ、だがっ。オリバー様は、この陣営を私に任せてくださっ……」
「……だから。私たちの襲撃から守りきれず〝失敗〟したでしょって」
「!」
 立て続けに思い知らされる現実。男はみるみる青ざめながらも、頭をブルブル振って受け入れたくない意思を示した。
「私たちの話を信じないのは勝手だけど、そんなのよりも事件解決に協力する意思を見せるなり、反省の意を示すなり……、罪の軽減を考えたほうが賢明じゃないかな」
「ふ、ふん……。私は日本においてそれなりの影響力を持つ立場にある。いくら逮捕されようと保釈金でどうとでもなるし、情報の隠蔽も簡単だ!」
 まだ逃げ道を探す男に、七尾はやれやれと肩をすくめた。
「あのな? あんたを逮捕したのは日本警察じゃない、『次元管理機構』だ。保釈金制度など存在しない。──だいたい、あんたがどんなお偉いさんかは知らないが、次元世界を束ね管理する組織に、たった一世界の人間の影響なんて及ぶわけがないだろう?」
「はっ!?」
「あんたにはもう、次元管理機構の法に則って罪を裁かれる道しか残されていないって言ってんだ」
「次元管理機構の、法……」
 まだピンとこないのか、思考が追いつかないのか。
「次元犯罪に関する刑法は、けっこう厳しいぞ。──罪の度合いによっては、次元の海に放り出される判決が下された前例もある」
「じ、次元の海……?」
「知らないか? 次元渡り能力がなければ、九割は死あるのみ。そして刑の完遂まで監視される。──万が一、残り一割の確率で生きながらえたなら、別の方法で刑が執行されるまでだ」
「ヒ、ヒイッ……!?」
「あんたはまず、この世界の常識が通用しない『次元犯罪』に手を染めたことを自覚したほうがいいな」
「あ、あ、ぁ……」
 やっと自分の立場に自覚が芽生えてきたようだ。男はひざから一気に崩れ落ち、呆然と自分にはめられた手錠を見つめるばかりだった。

 

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