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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで!【番外編・御影解宗の休日】1

   

 普段みせない御影のライフスタイルからなる事件簿。
 
 

 ゴールデンウイークがはじまり長い休暇もはじまった。

 探偵として頭を使っていた日々にくらべて、日常の暮らしを持て余す御影にはどうやら天性的な災いが降りかかる宿命にある。

 突然の訪問者の警官二名に聴取をとられる。

 先日、事件が起きたというのだ。その証拠に心あたりはないかとたずねられる。

 しかし、御影は培われた探偵としての着眼点で指摘した。見え透いた警官たちの目的は?

 警官は御影という若者の推察力にたじろいだ。
 

 しかし、それは事件に巻き込まれる序章にすぎなかった。

 

 これは俺が探偵として、見習い探偵から真の探偵の称号をあたえられたのちの話だ。

 ゴールデンウイークの10日もの長い休みに起きた出来事を綴るちょっとした物語である。
 
 

 都内で一人暮らしをしている俺の部屋に、まだ朝の9時前だというのに訪問してきた者がいる。

「おはようございます」

 ドアを開けるとそこには警官がふたりいた。体格のいい大柄の男と、身長は高いが細めの警官がへつらうような笑みを浮かべていた。

 まだ少し寝ぼけていた俺の機嫌は突然の脈絡もない訪問者に苛立ちが湧いた。

「朝から警官が俺みたいなしがない一般人に何の用ですか?」

 嫌悪感を滲ませた物言いに警官の笑みが困惑に変わった。

「すみません。この部屋のかたですか?」体格のいい警官がいった。見た目とちがってチワワのように声がか細くひっくり返っていた。

「そうですよ、この部屋の住人じゃなかったら、俺が出てくるわけがない」

 警官ふたりは顔を見合わせていた。言い知れぬ剣幕にたじろいでいるようだった。

 俺は体格のいい警官の手に何かを持っていることに気づいた。これでも探偵を生業にしている。事件の香りを嗅ぎ分けられないわけがない。

「それで、どうしました?」

「ええ、こちらの中身に見覚えはありませんか?」

 うしろにいる細めの警官がいった。

 体格のいい警官は手にもっていたのはビニール袋。その中には見慣れたものが入っている。

「ペットボトル?」袋からとりだして確かめた。

 ふたりの警官も確かめるように見守っていた。なぜ、そんな顔をしているのかわからないが。

「あっ、警察のひとが回収してんの? ゴールデンウイークに入ったのを忘れて出せなかったんだ、持っていってくれる?」

 ゴミ収集を手伝っている地域貢献の警官だと思いこんだ。だがそんなボランティア活動をする警官はまずいない。彼らの狙いをはずすためだった。何か疑惑をもたれているからこうして訪問しているのだ。

「ちがいます」

 面食らった。「じゃあ、このペットボトルがなに? 俺のではないよ、今週出すの忘れたっていったでしょ、だからそれは俺のではない」二度も念を押すように言った。

「わかりました。ちょっと持ち主を捜してまして、それで…すみません朝から、失礼しました…」

 立ち去ろうとする警官ふたりはどこか様子がおかしかった。

 やはり何か疑われているのだろうか。訪ねてきたことでこれほどの巡り合わせはない。たとえ俺が休暇だろうと関係はない。探偵魂に火がつくってもんだ。

 どうせ読書浸りの休暇だ。余暇を埋めるにはちょうどいい。自ら首をつっこんで関わってやろうじゃないか。

「ちょっと待って、それさ?」ドアが閉じた。部屋の前に天から舞い降りたように俺は立った。

 上下ジャージ姿にサンダルを履いて、髪の毛はボサボサのままだった。けして探偵だと胸を張って言い切れるものではない。まして天から舞い降りたなにかではぜったいにない。

「それって事件の証拠なわけ? 持ち主を捜しているなんておかしいでしょ、重要な物的証拠を警官ごときが持ちだせるほど、いまの警察はずさんなわけ?」

 怒涛の物言いに警官ふたりは顔を見合わせていた。

「すみません、ちょっと他言できません」体格のいい警官が穏やかにいった。

「人にものを訊ねておいて、ちがったら理由もなしに消えるつもりか、こっちは街角インタビューにつきあったわけじゃない。いまちょうど飯を食べようとしていんだよね。最近ややこしいことばかりに直面したせいでリラクゼーション中なわけよ。普段はもっと早く行動するんだけど、さすがに疲労困憊気味でね、今ちょっと遅い時間の朝食だけど…あなたたちの話に邪魔されたんだよねえー」

 たしか9時になろうとしていた。

 

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