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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第27話「これでよかったのか」

   

実の息子が行方不明となっているシエロも、エリザを送り出すべきか悩んでいた。

「兄様は私に何も話してはくれなかったけれど、それでも私のことを信じてくれていたのだと思います」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第27話「これでよかったのか」

 

 

***

 結局、師匠は夜になっても帰っては来なかった。どこへ行ったのかと心配する私にスウェナは、『意地っ張りだから、あの人』と、そう言って部屋へ戻って行った。
 師匠は明らかに私を避けている。その理由がわかっているからこそ、追及しずらい。

「……どこまでも優しい人」

 私は膝を抱えて、そう呟いた。
 一言も言葉を交わさず、島を出るような真似はしたくない。最後にきちんと顔を見て、話がしたいのに――――。

「ここで立ち止まるわけにはいかない。私は進むと決めた……それなのに」

 私の覚悟を一番よく知っているはずの師匠が逃げている。その事実に、私は困惑していた。
 もしかしたら、プランジットの住人の言葉を聞いて、思いが揺れているのかもしれない。『彼の最期の願い』か、『私の命懸けの戦い』か、どちらを選ぶべきか迷っているのだとしたら、私を避けるのも頷ける。

「今更弱気になるなんて……」

 私はそう自分に渇を入れると、立ち上がった。

***

「今夜はいい潮風が吹くな」

 砂浜の上に乱雑に座る男の背後で、私はランプの火を消した。そして、ざくざくと砂を踏んで男の横に座り込む。

「師匠」
「何だ」
「怒らないんですか? 私、言いつけを破りましたよ」

 私は師匠と話をする為に、スウェナとキールが寝静まった時間を見計らって家を出てきた。外出するな、という彼の言いつけを破り、ここまで来たのだ。

「今日は見逃してやる」
「……ありがとうございます」

 海と砂が混ざり合う音に耳を傾けて、私は目を閉じた。
 これほど穏やかな夜は、いつぶりだろう。もう思い出せないほど遠い昔のような気がした。

「師匠、どうして逃げるんですか?」
「逃げてなんかいねぇさ」
「私が気づかないとでも?」
「…………」
「……お話があって来ました。もう逃げないで下さい。お願いです」

 そう言い、師匠へ顔を向けると、視界に飛び込んできたのは酒だった。私は溜め息を溢して、腕を組む。

「それ、お酒ではないですか? こんなところで一人で呑むなんて……全く。スウェナに叱られますよ?」
「俺だって、は呑みたくもなるさ」
「…………」

 そう言われてしまっては、これ以上何も口を出すことは出来なかった。
 

 

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