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マスクエリア 第五覆面特区〜一章 覆面マネー(6)

   

「覆面商事」の事を語るのと時を同じくして、様々な方面から、通常では考えられない事態の発生を清水たちは聞かされる。そして、それらの話にも、「覆面」の影がはっきりと確認できるのだった。

 

「なるほど、あなた方も『覆面商事』と名乗る集団と接触を……これは、単なる偶然にしては、できすぎていますね。黒田さんを屈伏させた人々というのも恐らく同じ集団でしょう」
 清水が、ここ数日の間に起こった出来事をかいつまんで話すと、榊原は、穏やかな表情で断定した。
 捜査当局員としては、いかにも不愉快であろう類の話を聞いているというのに、上機嫌に見えるのは、清水の言葉ではなく、割り当てられたブース上のテーブルにあるものが原因だった。
 榊原は、黒色に染まっているだけの、素の麺にも見えるようなパスタを満足気にすすっている。
「だろうな。この島の中にいる連中にとっちゃ、黒鳥会は厄介というよりむしろ恐ろしい連中だし、利用価値もたっぷりある。そんな事をするのは、こっちの事情とは関係のない、外部の人間だ」
「そして、覆面を付けているにも関わらず、匿名性を強調するのではなく、自分たちの名前と行動を堂々と見せつけるような態度からして、彼らは、確固たる目的を持っているか、逆に完全なる愉快犯か、どちらかの性質を強く持っていると言えるでしょう。もっとも、政治的な売名が目的であれば、わざわざ素顔を隠す必要はありません」
(つまり、愉快犯ってことか)
 清水は、榊原が言外に語る真実に、苦々しい思いを噛みしめた。
 目的があれば、行動が正当化されるということはないにせよ、子供じみた考えしか持っていない連中に、清水たちはもちろん、この特区全体が掻き回されるなど、想像したくもないほど嫌な現実だ。絶対に、そんな行動が許されていいわけはないと、「第五覆面特区人」であるところの、清水の魂が叫んでいる。

 

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