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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 8

   

 腹心の部下を失い、怒り狂うプラチナ仮面から挑戦状を叩きつけられた名探偵・真行寺内蔵介。「お門違いだ」と困惑する探偵に、警察は「おいしい話」を持ち掛けてきた。

 うまい話には裏がある。安い土地にはゴミが(いや、もっと恐ろしいものが?)……あるかもしれない。

 

 

真行寺探偵事務所(承前)

 

 真行寺探偵あてに挑戦状が届いた日の夜。助手の松平少年は憔悴しきって帰宅し、松崎警部の部下たちも証拠品を手に捜査本部へ戻った。探偵と警部の二人が残った事務所の時計は22時を回っていた。

 探偵はウイスキーのボトルを棚から下ろし、警部に向かって持ち上げて見せた。

「いかがですか松崎さん」
「あ、申し訳ないが公務中なんで」
「そうですか。じゃ私はいただきます」

 気は心というわけで、探偵は冷蔵庫から烏龍茶のペットボトルを出し、氷の入ったグラスに注いで警部の前に置く。探偵もオンザロックを手に、テーブルを挟んで松崎の正面に座った。これからは大人の時間である。

「文面を見るに、やっこさん相当カッカきてるね。どうする? この分だと何を仕出かすか分からんよ」
「脅かさないでくださいよ」
「あんた命を狙われてんじゃない?」

 烏龍茶のグラスを口に運びながら、警部は探るような視線を探偵に向けた。

「冗談じゃありません。しがない私立探偵なんか殺してどうなります。それにプラチナ仮面は人殺しはしない主義でしょう?」
「当てにはならんな。どっちにしろ、あんたには身辺警護に付けざるを得ない。課長もOKするだろう」
「……また大袈裟な」
「窮屈だろうが、決まり事みたいなもんだから。我慢してもらえないかな」

 松崎警部はわざとらしい笑顔を浮かべて、「決まり事」にアクセントを置いた。

「いつだったかあんたのところへ行かせた、汐留署の若い奴がいたでしょう。覚えてますか」
「ああ、彼ですね」

 探偵は吉井刑事の顔と服装を思い浮かべた。鳥籠の中の『アマデウス』はとうに眠ったらしく、人真似も救急車のサイレンも途絶えている。

「ちょっと変な奴だけど、最近の刑事にもああいうのが増えてきてね。私らの若い頃とはだいぶ変わったよ。それからね真行寺さん。全然別件なんだが」
「何でしょう?」

 松崎警部の顔から笑いが消えた。テーブルにグラスを置き、腕組みをして真行寺の顔を見据える。
 

 

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