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そっくりさんの需要

   

特に目立ったところのないフリーター、用賀 純一は、自宅のポストに入っていた見慣れぬチラシに首をひねっていた。一般的な業務と時給が記されているが、その右側に良く分からない数字が並んでいるのだ。日給のようでもあるが表記はなく、そのことにかえって興味を惹かれた用賀が会社の方に電話をかけると……

 

「どうしたことなんだ、これは」
 用賀 純一は自宅のポストに入っていたチラシを眺めながら、眉をしかめ首をひねった。
 もっとも、彼がどんな表情を作ろうと、見る者に特別な印象を与えることはない。
 用賀は実にどこにでもいる青年だった。地元の高校を至って平凡な成績で卒業し、ビジネス系専門学校で一年ほど勉強してから自分探しのためフリーターに、という経歴も、ごくありふれていて人の関心を惹くには至らないだろう。
 しかも身長体重も日本の成人男子の平均とほぼ合致、ルックスにしても完全な平均点、どこにでもいる顔、という以外の評価を受けたことがない。
 友人からトラブルが持ち込まれたことはないが、儲け話にもまるで縁がない。
 そんなまったく平凡な自分、人と違うところがあるとするなら平凡過ぎるところ、といった感じの用賀に届いたチラシは、確かに異様だった。

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「うーむ……」
 チラシを見直して、再び用賀は首をひねった。この会社はどうやら、すぐにでもできる仕事なら大体取ってくるだけの営業力を有しているようだ。
 若干強気な時給設定にも見えるが、それも実力の表れと考えれば不自然ではない。
 問題は、7200円なり8000円なりといった表記だ。日給のようにも見えるがそう書かれているわけではなく、しかも他の記述からすると、チラシを配られた方が、つまり用賀たちが支払う形になるようだ。
 書かれ方からして単純な誤字でもないだろう。しかし、大した蓄えも欲しいものもない用賀に、一体何を支払わせようと言うのだろうか。
 少し悩んでから用賀は電話をかけてみることにした。時給だけ見ればまあ平凡な求人だが、詳細不明な点が興味を惹いた。

 

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