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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第28話「流れ」

   

エリザは島が平和な理由を解き、意志を告げる。

「侵略しようと思えば出来ないことはない……。それなのに、アグランドは今まで守られてきた。その理由はこれですよね?」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第28話「流れ」

 

 

***

「本当だ。亡の欠片が……温かい

 私をかすように――――そして、応えるように、欠片は光り輝いていた。
 私は惹かれるようにして、それを抱き締める。とくん、とくん、と伝わってくる温もりに目を閉じて、私は彼女の名を呟いていた。

「ミッシェル……」

 これは、彼女が私に託した鼓動だ。私が導き、扱うべき力だ。今、ようやくそれがわかった。
 強い力であればあるほど、扱い方を間違えれば簡単に人を殺してしまう。欠片が悪事に利用されることなど決してあってはならない。だから、ルイスが求めている『来るべき時』までに私が全て集めよう。精霊が私を信用し、託してくれるかはわからないけれど、それでも私に出来ることがあるのなら――――迷ってなどいられない。

 師匠が言うように、私が欠片を扱える数少ない人間なのだとしたら、いつか必ず全てを知る時が来る。

「どうしてあなたは、私を生かしてくれたの……?」

 私の存在が一体誰を脅かすかわからない状況で、彼女は『国』ではなく、『私とルイス』を生かす道を選んだ。その時のミッシェルの覚悟は、何者にも計り知れないものだったはず。

 もう二度と会うことが出来ない赤髪の彼女を思い出しながら、私はそっと目を開いた。

「カーネット王家について、叔父様も何か知っていたはずだわ。もしかしたら、ルイスが天使の生まれ変わりであることも知っていたのかもしれない……」

 現に彼は、王位継承権第一位のルイスよりも、王女の私の命を狙っていた。ルイスを殺すべきか迷っていたのではないだろうか。

 あの城での出来事以来、叔父も行方不明となっている。彼と直接話が出来れば、真相に近づくことが出来るのかもしれないが、リュスト帝国とバール王国の庇護、そしてカーネット王国軍を味方につけている彼を探すのは難しいだろう。勿論、の話だ。だが、そうなると――――。

「王家について深く知り、尚且つ、私の話を信じてくれる者……――――やはり、父様しかいないわね」

 私達を捨てた男だ。見つけたところで、私の話を聞いてくれるとは限らない。だが、出来るだけ早くあの人を探さなければ。
 そう改めて今後を意識したところで、私はハッとし、口を押さえた。

「あっ……『捨てられた』って、言っちゃだめなんだった

 私は今まで、ルイスがそう口にする度に怒っていた。私達は捨てられてなどいないのだと、声を上げて言わなくてはならないのに――――。

 言ってはいけないことを口にしても、抱き締めてくれる兄が傍にいないことが、今になってとても空しく思えた。
 

 

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