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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 10

   

 呪力によって捜査陣の動きを察知してしまう「千里眼」。

 そして、1911年5月のウィーンでは何が起きたのか。

 

 

虎ノ門署・捜査本部(承前)

 

 プラチナ仮面は「千里眼」を駆使する。小木禎一郎・国際捜査管理官はそう言って、捜査本部の面々の反応を待ち構えた。増子刑事部長が口を開いた。

「その千里眼で、警察の動きを逐一察知して裏をかいたっていうのか」
「はい」

 刑事部長は捜査員一同の顔を見回してから、再び小木管理官に視線を戻した。

「小木君よ。何のつもりでリヨンはこんな与太話を送ってきたの?」
「『参考に』ってことでしょう」
「もうちょっとマシな話は無いのか」
「これだけです」
「確認してみる必要がありゃしないか? 君自身どう思うよ」

 刑事部長の顔に軽蔑の兆しが浮かんだのを、小木管理官は見逃さなかった。顔に血が上り、返す言葉にも勢いがついた。

「この2日間、情報の確認で散々手間取らされたんですよ! リヨンの担当者には直接電話して問い合わせました。そしたら『送った通りで間違いない』って。私も2、3度聞き返しましたよ」
「その担当者って誰」
「CIRT(Crime Incident Response Team)のジャック・トゥルニエですよ。部長もご存知でしょう」
「分かったよ。俺も後でジャックに確認しとこう。じゃあ、まだあるなら続けて」

 フランス国家警察から派遣されて9年塩漬けになっている男の名を聞き、増子はようやく矛を収めた。小木管理官は軽く下唇を噛んでから説明を再開した。

「えーと、どこまで話したんでしたっけ。そう『千里眼』でした。この仮説を裏付けるために、ロンドン警察は当時の優秀とされる霊能者を呼んで実験を行いました。肉眼から遮断されている文字や物体名を言い当てるといった、ごく初歩的な方法だったようです。その結果、報告書にはこう書かれてます。『さらなる追加的な実験の必要性を認めるものの、現時点において仮説を否定し得る有力な証拠を得られず』。……もし、『千里眼』を可能にする何かがプラチナのマスクに備わっているなら、肉眼に頼ることもなくなりますから、目の部分が塞がっていても不思議はないということになります」

 於来之木島で押収されたレプリカの仮面がスクリーンに映し出され、続いて十字型の目の模様がクローズアップされた。

「繰り返しになりますが、これはあくまで100年前の見解です。ICPOとしても当然、我々に送ってくるには忸怩たるものがあったでしょう。これはトゥルニエも言ってたことなんですが」

 数秒の間、小木管理官は何かを思い出そうとするかのように目を閉じた。

「当時のイギリスはインドっていう巨大な植民地を抱え込んで、傀儡国家の『インド帝国』皇帝を英国王が兼ねるというように、いろいろと無理なことをやっています。そして本国にも東洋文化が流れ込んできますから、その影響で玉石混交の神秘思想が乱立していたり……。そんな時代の風潮が事件の報告書にまで影を落とした可能性も、まあ否定できないというわけです」
 

 

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