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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで!【番外編・御影解宗のデート】1

   

 ゴールデンウイークを謳歌中の御影に携帯電話に着信。

 ひさびさに見る画面の着信名に意気消沈している。実家の母親からだった。

 第一声から叱咤激励の挨拶。御影は愕然としながらも母親の命に応じた。

 帰省した御影は、さっそく用件を聞いた。

「ひばり?」

 思いがけないことだった。というより忘れていた御影は、以前の事件から連絡をとっていなかったことを思い出した。

 恋愛がどうとか、彼女できないの、とかそんな指摘を母はした。

 そして母は今のひばりの現状を語ると、御影は想像もしていなかった事実に衝撃をうけた。

 推理するよりもむずかしい恋愛と女心に御影はいま窮地に立たされた。
 
 

 御影とひばりのデート開始!

 

 部屋の中は無音状態だった。それは読書に耽る俺の精神が物語の中に浸透しているからだ。

 ブー、ブー、ブー、外界とつなげるスマートフォンだけが俺の満たされた異世界への精神を呼び戻す。

「なんだ、えっ、実家から電話か…、めずらしいな…、はい」

 相手は母親だった。

「世間の空気を読みなさい!」という叱咤激励が第一声だった。

 まったくどういう意味だ。俺はまったく関係ない話を聞かされていた。

「なんだよいきなりさ…、えっ? ああ、いや、そんなことは…え? そんなことしてらんねえよぉー!」

 社交辞令のような話を母親とする。休暇中とわかると顔をみせろとせがまれ、俺はそのまま実家に帰郷した。とはいっても同じ都内だ。自分のところからでも30分はかからない郊外まできた。

 大きな屋敷を見上げていた。「ひさびさに見ると、それなりに立派な家で育ったなと実感できるよな」

 俺は扉を開いた。呼び鈴を鳴らすのを忘れていた。でも、自分の家だ。気にもとめず中へ入った。

「帰ったよ」誰も聞いていないと思うが、一応は声を発した。

 タッタッタッタ、という足音が聞こえる。スリッパを履いたちからない足音だ。

「お帰りなさい、解宗ぼっちゃん」

「もうオババ、ぼっちゃんはやめてくれ」

「ぼっちゃんは、ぼっちゃんです。解宗ぼっちゃん、さあ、お部屋に荷物置いてください」

 財善 芳子(ざいぜん よしこ 53歳)、家政婦だ。長年、この江戸川家を支えてくれている。

「母さんは?」

「お部屋にいらっしゃいます」

「いまは暇なの?」

「すこし制限されているようですよ。だからよけいに解宗ぼっちゃんのことが気になるようで」

「だいじょうぶだよ、俺は」

「いえいえ、特に、恋愛面で、おっほっほっほっほ」

 不気味な高笑いを響かせ根城である台所へとオババは消えていった。

「オババ、ますます妖怪じみてきたな」

 荷物を部屋に置いて、母の部屋へむかった。

 扉をノックして反応をたしかめた。

 トントン。

「俺、解宗だけど、母さん?」

 静かなものだった。

「いないのか、どこへ」

 すると通路の先からなにかがつっこんできた。

「我が息子よー」突進してきたのは母親だった。

 勢い余った母の突進に俺はふっとんだ。

「なぜ、そんな破天荒な…」

「あんたなにしてるの、やっと帰ってきたと思ったら、のんびりとして、ちゃんと連絡なさい」

 御影 胡蝶(みかげ こちょう 48歳)、母だ。ここ江戸川家の一人娘だ。

 若き日の胡蝶はIQ200ある天才。天才少女としてタレントをしていた。どんな難解な問題も…解けてしまう。

 俺が産まれてからは専業主婦に徹していた。しかし俺が15、6歳になると、母は暇を持て余しIQの高さから、父の芸能事務所のタレントになりクイズ、バラエティ番組に出演していた。

 クールすぎて、一切笑わない、美人で頭脳明晰。秀逸な存在で憧れの的になって人気を博している。

「なんだよ、連絡たまにはとってるだろ」

「そうかしら、ひばりちゃんは全然連絡ないって言ってたわよ」

「え、ひばり?」

 俺は忘れていた。たしかに連絡をとっていなかった。それもこれも、氷室探偵事務所での仕事が忙しかったからだ。

 20畳ものリビングに移動してオババが紅茶を淹れていた。

「ああ、忘れていたな…」頭を掻いて誤魔化そうとしているのを、母は見抜いていた。

「だからあんたはダメなのよ、そんなんで彼女ができるわけないでしょ」

「いいよ、べつに、どうにかなるよ」

「恋愛を適当に考えないの。しっかりとむきあって気持ちを伝えるの、わかった?」

 この歳にもなって躾けらしい小言をいわれるのは耐えられない。と俺は思った。

 オババは淹れた紅茶のカップを俺と母のまえに置いた。

「ひばりちゃんとデートでもしてきなさい」

「ふざけんなよ、なんで急に…、あいつにだって予定や都合があるだろ。もう社会人なんだからさ」

 急にしずまりかえったリビングの凍てつきようときたら並みではなかった。

「ひばりちゃんね、就活失敗したの」母は神妙な面持ちで言った。

「えっ、たしか証券会社とかに面接してたよな? まさか、以前のストーカー事件で心を病んだのか…」

 

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