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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第29話「再び出会うその時は」

   

エリザの意志を作り上げたのは、この島だった。

「この島でそれを教わった。アグランドの皆から、命をもらったんです」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
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第29話「再び出会うその時は」

 

 
 だが、あれからとても長い月日が経っている。私達がいた頃の痕跡はもう残されてはいないだろう。
 だが、もしかしたらあの日、私達や兵を見かけた者がいるかもしれない。希望は、まだ残されている。それに、あの後マーサが無事だったのかどうかも確かめなくてはいけない――――。

「そうか。だが、お前の推測通り今も小競り合いが続いているとしたら、お前にとっちゃあ危険な場所だぞ」
「……はい、わかっています」

 それでも、あの教会へもう一度行きたい。最後にルイスといた場所へ、もう一度だけでいいから――――。

 その思いを口にすることは出来なかったが、代わりにペンダントを握り締めて、顔を上げた。

「まずはシアンを見つけ次第、亡国の現状をこの目で確かめていこうと思います。そして、困っている人がいるのなら助けたい」

 無力だと嘆くことがないように。悲しみだけが全てではないと伝える為にも、そうしなければならない。

「もう二度と国の争いに巻き込まれ、罪なき民が涙を流すことがないように……私が守りたいから」

 それがこの国に生まれてくれた民への恩返しだ。それこそ、カーネットの名を持つ者としての役割だと私は考える。
 私の揺るがない意志を見て、師匠は私に過去と現在両方の地図を手渡し、こう言った。

「お前の目指す世界は優しい。だが、そのこころざしのせいで傷つくこともあるだろう。お前を責める者もいるはずだ」
「……はい」
「でも、そんなお前だからこそ、救える人間がいるんだよ」
「……!」

 思いがけない言葉に私は目を見開いた。受け取った地図を抱き締めて、唇をきゅっと結ぶ。

「頑張れよ」

 歯を見せて笑った師匠につられ、私も笑った。

「頑張りますっ」
「そうだ。そうやって笑っていろ」

 師匠の大きな手の平が私の頭の上に重くのしかかった。身動ぎをしながらも、私はそれを受け入れる。
 父に頭を撫でられた記憶はあるが、これほどまでに鮮明ではなかった。

「色々と気持ちの整理をしながら……進みます」

 自分のこともルイスのことも、答えを出せるのは自分自身だ。

「亡の欠片と父を探さなければ……」

 そして、共に歩む『仲間』も。

「……やるべきことが多すぎて、迷うかもしれない。王国を取り戻すまでに数年以上の月日がかかるかも……。けれど、私は決して一人じゃないから」

 最初から、私は一人ではなかったのだ。ずっと、たくさんの人々に見守られていた。今までそれに気づけなかっただけ。
 母様の残した言葉。ルイスが与えてくれたこの気持ち。お祖父様が伝えてくれた愛。私の体には、その思い出が全部詰まっている。

「この島でそれを教わった。アグランドの皆から、命をもらったんです」
 

 

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