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SF・ファンタジー・ホラー

紅蓮の翼 3

   

夢を見ていた。
いとしいいとしい、今は亡き、男の夢。

目覚めれば、静寂に包まれた、世界。

神を生きる指針にする国での、滑稽な行い。
それを否定するつもりはないけれど。
鴬伽には受け入れがたかった。

不定期に連載致します。

こちらにて初めての一般作品でございます。
こちらに関しては、
今後、一切の性描写も色恋沙汰もありませんので、あしからず。

 

 違和感を抱くほどに、何の音も聞こえない。
 まさしく、静寂。
 否、無音といったほうがいいだろうか。
 生活の中、生み出される音はもとより、人の気配すらない。

 風の音も鳥のさえずりも。
 あらゆるものの創り出す、すべての音が遮断されている。
 まるで音を伝える大気のない真空の宇宙のように。

 ――宇宙は、今このときも膨張し続けているのですよ。

 不意に脳裏に浮かんだ、声。
 まるで湧き出る清水のように大きな泡が割れ、現れ出た、声。

 ――今、こうやって見ている空は、宇宙の中のほんのひとかけらでしかないんですよ。

 穏やかな、いつもかすかな笑みをたたえた……。

 ――そして今、目に見える星の瞬きも、何千年、何万年、いや何億年前のものなんですよ。

 北の都市で生まれ、”研究者“をしていたという。
 鴬伽の周囲には今まで存在しなかった雰囲気を持っていた。

 ――不思議でしょう? 今見えている星は遠い彼方にはもう存在していないかもしれないんです。

 研究者の中で起きた派閥闘争に巻き込まれ、逃れるように落ちてきた。

 ――星の生命は、長いようで短いんですよ。

 父が拾ってきたそのときはどこか神経質で、人というものに対して不信感をむき出しにしていた。

 

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