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ノーベットノーペイ

   

将棋、囲碁、麻雀……、世の中には様々なゲームがあるが、あらゆるレベルのプレイヤーを熱中させるイベントがあった。

「NN」と呼ばれる催しであり、主催者が用意した対戦相手に勝つことで、人生が変わるような大金や賞品が得られるのだ。

須崎 彰一もまた、単なるゲーム少年から「NN」完全制覇を目指すようになった一人である。

須崎は「麻雀」で勝ち進んでいったのだが……

 

「彰一、一日だけでいいんだよ。壮行会のメンツが足りないんだって」
「ダメっすよ、先輩。俺、手加減できませんからね。それに調整もありますから」
 大学一年生の須崎 彰一は、OBからの懇願をばっさりと断った。上役に怒られるだろう先輩がひどく残念がっていたが、他のことならともかく、麻雀に関しては、格下の頼みを聞く必要はないと思っているので胸は痛まない。
(草野球にプロ野球の選手を呼ぶのはマナー違反ってもんでしょう)
 と、心中では毒づいたりもするが、表面上は笑顔を絶さない。
 従順な学生以外の顔を見せることは極力避けたいという思いがあった。
「よう、早いな。大学生」
「バイトの代わりですからね。そうのんびりしている気にはなれません」
 潰れかけである、と、もう五年は噂され続けているゲームセンターの裏口から須崎は店内に入ると、むっとする温かい空気とともに、男たちが声をかけてきた。
 軽く応じる須崎の態度も校内でのそれよりはるかにこなれ、貫禄を帯びている。
 空いた筐体の前で座り、ボタンを操作するその姿からは、妙な雰囲気のようなものまでが滲んでいる。
「うしっ、ロン上がり。これでトップだ」
 須崎が自らの勝利を宣言すると、店内からどよっとどよめきが上がった。
「トップ率が五割を上回ったな。これであのディーラーに挑めるな」
「店長、いらしてたんですか」
 耳慣れた声に振り向いた須崎は、人好きのする笑顔を見せた。
 店長と呼ばれた四十代半ばの男は、まるで飴玉を出すような気軽さで、ポケットから札束を出した。
「て、店長っ。そこまでして頂かなくても」
「バイト代だよ。東沢がずっと詰めてるんだろ。交代するなら、お前だって、木口だって金、使わなくちゃならん。維持費だと思いなよ」
「そうっすね。セーブポイントに使うアイテムって、結構値が高いですもんね」
 一応拒否した須崎だったが、重ねて勧められるとためらいなく受け取り、カバンの中に放り込んだ。
 そして、妙にテカっている床面の一部に手を当てると、ズルッと床をずらし、その中にある穴に入っていった。

 

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