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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで!【番外編・御影解宗のデート】4

   

 強面の男たちと赤ん坊の親だという男女。板ばさみにあう御影とひばり。

 目的はひばりが抱きかかえる赤ん坊だった。

 ナイフをにぎりしめる父親だという男。黒服の強面の三人の男。

 一触即発の状況に御影とひばりはにらみかえしていた。

 そこへ車椅子におされて現れた一人の老人がその場を鎮めた。

 その赤ん坊の祖父だと名のる。しかも車椅子をおす女性に御影は見覚えが…。
 
 

 そして、この状況の経緯を語りはじめた。いつのまにか巻き込まれていた御影とひばり。

 しかし、何かを感じとっているふたりでもあった。

 

 そこに突如車椅子で姿を現したのはご老人だった。車椅子の後ろを押している女性に見覚えがある。

 ご老人はその筋の長のようだ。ダブルのダークスーツにエナメルの光沢感の靴。禿頭に白いひげを蓄えていた。まるでゴッドファーザーの貫禄だ。

 老人の顔には深い皺が刻まれ、とてもけわしい眼光を放ったまま震える手をのばしていた。その指先はひばりが抱える赤ん坊を指している。

「わしの孫を返せえー」

 誰もが身を引いた。

「ばぶっ?」

 赤ん坊だけは無敵である。敵意や恐怖というのが通じない。それともひばりに護られている絶対的な安堵感にひたっているのかもしれない。

 水を打ったようにけたたましい騒動は風が吹いたように一掃された。

 辺りは音楽と楽しそうな声、乗り物に乗って悲鳴がとんでいる。

「はいはいはい、終了ぉー」

 その呼び声はこの場をおさめる救済者だった。

「政木警部!」

 やっぱり車椅子を押していたのは警視庁捜査一課の政木警部だった。俺は驚いた。

「あら御影くんじゃない、なにしてんのあんた?」

「それはこっちのセリフだし、こわもての人らといっしょにいるところをみると、刑事なのその人たちは?」俺の推測はハズレているかもしれないが、当たっていてほしい。なぜなら恐いからだ。

「あれ、そっちの子はもしかして、彼女?」

 いやらしい目で冷やかす独身女に思いっきり、イエスといってやりたいが状況が呑みこめないため事情を伺いたかった。

 政木側の人間関係がわかれば構図が見えてくる。だが話を逸らされた。

「おやおや、見習い探偵の御影くんではございませんか」揶揄するように伯田警部補がさらに後ろから出てきた。

「よっ」黒川刑事もいたが、いつのまにか親近感のある挨拶になっていた。

「見習いじゃない! 真の探偵になったよ、伯田警部補」

「そうかい。それはそれとして、妙なところで会うものだ」

「ええ、まったくなにがなんだかさすがに理解できない。どういうことだ? この赤ん坊に何か秘密でも?」

「御影くん、すこしは答えがちらついている感じな言い方ね?」政木警部はプライベートできているわけではない。

 ここは東京ディズニーランドだ。部下をつれて、ご老人の車椅子を押し登場とはどんなプライベートだというのか。

「仕事ですか?」

「そうよ」政木警部はほくそ笑んだ。「誘拐事件のね」

 俺は、ちらっとそのケースものぞかせていた。頭の中ではある程度の推測が枝分かれして答えを導いていた。

 だいたいなぜ誘拐事件に殺人課の刑事がと思った。

「やはり…」

「どういうことよ?」ひばりが困惑していた。

 ばぶばぶ、と抱っこされながら赤ん坊だけは我関せずと言わんばかりに、ひばりの顔に葉っぱのような小さな手が触れようとのびていた。

「いや、全貌はわからないが、その赤ん坊は誘拐され、そして何か条件の交渉のためになっていたとみえる。おそらく身代金が妥当だろうな」

 ひばりは絶句した。顔にも影が差し蒼白していた。

 ここにいる全員を敵視している。

 

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