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ミステリー・SF・ホラー

宅地造成 (前編)

   

 2年。

 短いと言えば短く、長いと言えば長い。名古屋支店に異動を命じられた俺は、「よほどのことがなければ」2年で本社に戻すと上司に言われていた。

 よほどのこと。よもやそんなことは起こるまいと俺は思っていたのだが。

 

 
 ある月曜日の朝。

 通勤途中でいつも目に入った森が綺麗に無くなっていた。電車の時刻に余裕があった俺は、何となく興味に駆られて近くまで行ってみた。
 

 真新しい傷口のように、生々しいキャタピラの跡が縦横に刻まれた地面。それが小学校の校庭くらいに広がっている。手前に中型のトラックが2台、奥の方にはショベルカーがアームを持ち上げたまま止まっていた。

 赤土の中から、切り倒された雑木が枝を四方八方に突き出しているさまは、断末魔に天をつかもうとしたまま硬直した無数の手を思わせた。

 俺は土曜から日曜にかけ、自宅を離れて東京にいた。多分その2日間で一気に伐採してしまったのだろう。

 「森」というより「雑木林」という形容の方が適当とも思える程度の木立ちだったが、綺麗に無くなってしまうとこうまでも景色が変わるのには驚く。その見晴らしの良さは、まるで別に土地に来たかのようだ。突然開けた青空は気味が悪いほど新鮮で、畑を隔てた先の中層マンションまでが見渡せた。

 道路沿いにあった不法投棄を禁じる札が抜かれ、宅地造成工事の許可標識が立っている。この面積なら一戸建てで優に30棟分はあると思った。
 

 

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