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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

見習い探偵と呼ばないで!【番外編・御影解宗のデート】5 END

   

 御影も感じていたが、これは身内の揉め事。でも、かんちがいからくる行き過ぎた衝動だと察していた。

 正真正銘の大也の両親は育児放棄ではなく、いま旅行をしているだけだ。しかも治道からの粋なはからい。

 それがどういうわけか、叔父にあたる俊三にまちがった情報が伝わり、こんかいの事件に発展した。

 俊三が連れている恋人のあおいと、その結婚を許さない治道と交渉するのが目的だった。

 しかし、新成会会長治道が次男である俊三に誤解であることを解く。

 意思の疎通がすれちがった親子の思いやり。それが崩れた形で犯行は現実化した。
 
 

 事件は終わりをみせ、ひばりは赤ん坊を家族へ手渡す。なごりおしい気持ちも、それはしかたがないこと。

 御影もまたそんな覚悟を決めて、ついにひばりに想いを告げる。
 
 

 感動のクライマックス。

 

 治道は俊三とあおいの結婚を反対していた。

 俊三の要求は赤ん坊の大也誘拐後、いっさい関わるな、ということだった。つまりもらい受けるということだった。

 こんなところで後継者なんかにさせないという俊三の訴えだった。

 しかし育児というのは金がいる。「身代金、1000万円用意しろ。赤ん坊は返さないけどな」と電話口で要求したという。

 俊三は次男として、新成会に関わらず一般人の中に紛れて生活をしていた。

 普通のサラリーマンだった。

 恋人の光田 あおい、彼女も普通のOLだった。

 治道はそんな平凡な暮らしを許さなかった。

 だとしたら俊三は結婚承諾を認めさせるため、赤ん坊の幸せを願って、抵抗と育児放棄するなら俊三とあおいは自分たちで面倒みると決意した。

 結婚承諾をもらうために交渉手段として赤ん坊という駒を手に入れた算段だった。

「それが本当の誘拐をした理由か」治道はうなだれた。

「そうですよ」俊三は再びナイフを力いっぱいにぎりしめた。視線はひばりを見つめていた。

 視線の間に阻むように御影はひばりの前に出て身を盾にする。

「こっちを見るな!」俺はにらみつけた。

 刃渡り15センチほどのナイフだ。以前にもナイフをむける相手と闘ったことがある。

 俊三は見た目どおりの優男だ。それでいてあやうさはあるが、俺は倒せると高を括った。

「待つんだ」治道は厳かにその場を停止させた。「俊三や、おまえの気持ちはわかった。おまえがそんなにも決めた相手であるならそちらの女性と結婚するがいい。だが、大也は返せ。いずれは後継者にはなるだいじな孫だ。けして恭也たちは見捨てたわけではない。恭也と美千留さんの子どもだ。まったく、だれが噂を流したのかしらんが、あのふたりはいま新婚旅行に出掛けているんだぞ」

“へっ?”

 全員の頭の中に浮かんだ。

「新婚旅行!」俊三は叫んだ。「でも、もう結婚して10年だろ―─」

「そうだ。若頭やほかの舎弟どもが妙な噂を流し、末端の輩がおまえに吹聴した噂だ。けしてふたりは大也を見捨てたわけではない、これをみろ」

 治道はスマートフォンをふところからとりだした。

 のばす手を政木警部が受け取り、中継役になりナイフを持つ俊三に歩み寄るが、恐怖心は微塵もないようだ。警戒心なしにスマートフォンを手渡した。

「はい、これを見たらわかるわ、それで納得したらナイフを捨てなさい」政木はあきれ顔で言った。

 俊三はスマートフォンの画面を見た。それはメールだった。

“お父さん、大也はどうしてますか? いいこでいますか? おむつの世話、申し訳ありません。夜泣きもたいへんかとおもいますが、きょうもよろしくお願いいたします。あときょうの大也を写メして送ってほしいです。こちらも送ります”。

 大也の両親である恭也と美千留のツーショット画像が添付されていた。

 

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