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SF・ファンタジー・ホラー

透明の世界 9話「主に奇伝のキスを(2)」

   

――――時は明治。謎の令嬢と少年のような男による怪異伝。中編。

 

 

***

「電灯が少なくなってきたわね」

 注意して歩かないと、通りすがる人とぶつかってしまう。それほどに視界は悪かった。
 慣れている夜道のはずなのに、旭がいないだけでこれほどまでに違うものなのか。
 腕を擦りながら、夜空を見上げた。

(情けない。今になって、素直になればよかっただなんて――――)

「……いけない。皺になっちゃう」

 服から手を離して、再び足を進めたその時だった。

「……ああ全く。私には時間がないのに」

 額に手を当てて、呆れた声を出した私の目の前に現れたのは、二人組の男達。ケタケタと醜い笑いを溢して、私を見つめている。

「やあお嬢様。こんな時間にお一人ですかぃ」
「おっ、結構いけてるじゃねぇか」
「…………」

 私の格好から、どこかの名家の令嬢だとでも思ったのだろう。大方合ってはいるが、彼等の期待には応えられそうにない。

「いい歳をして、暴漢のような真似事をするだなんて情けないわね」

 私は髪を払って、男達を睨んだ。脅えもせず、周囲に助けを求めようともしない私を見て、彼等は若干躊躇いながらも刃物をちらつかせてきた。

「暴漢でも何でもいいさ。ここでその上等な服を破かれるか、金目のもんを出すか選びな」
「おい待てよ。浚って、身代金貰った方がいいんじゃないか?」
「おお! そうするか!」
「盛り上がっているところ悪いのだけれど、あなた達にはどちらも無理ね」

 男達は強気な態度を見せる私を見て、ようやく気づいたようだ。私が何者か――――。
 ああ、またで見られてしまう。それだけはどうしても好きになれなかった。

「そ、その赤紫あかしの瞳……!」
「聞いたことがあるぞ。てめぇ……」
「あら。私のことをご存知で?」

 意地を張ってにこりと笑った私から、彼等は一歩後ろへ下がる。そして、まるで私を化け物でも見るかのような目つきで睨んできた。
 何故、私が蔑まれるのだろう。何故、私が『祭呂』として生まれてきてしまったのだろう。そんな目で見なくても、私が異質なのは知っている。だから、やめてほしい。
 

 

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