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SF・ファンタジー・ホラー

宅地造成 (後編)

   

 最強害虫に自爆攻撃を敢行され、俺の心はまさに折れようとしていた。

 そんなみじめな俺の前に、ラスボス(?)が現れる。

 

 
 ムカデ様との対決から3日。
 

 今日は日曜日だ。俺は今、前夜作っておいたクリームシチューの鍋の前に立っている。

 美也子がここを訪れるわけでもない。自分で食べるため「だけ」に、鍋にたっぷりのシチューを作り置きしたのだが。

 蓋はしておいた。しかし菜箸とお玉を入れる分、鍋と蓋の間に隙間はできる。俺は冷蔵庫へ入れるのを忘れて、ガスレンジの上に置いたまま寝てしまった。その不注意の報いがこれか。
 

 おいしそうなクリーム色のスープの上に、そのお方は揺るぎない存在感を持って浮かんでおられる。
 

 体長およそ7センチといったところか。黒々とした光沢を放つ、楕円形の見事な体躯。その頭部から、2本の触角が優雅な曲線を描いて伸びている。

 そう。衛生害虫の王としてこの国に君臨する、あのお方だ。

 そのお方が、俺の丹精込めて作ったクリームシチューの中に飛び込み、思う存分ご賞味なさった上で往生を遂げられたという図が、目の前に揺るぎない事実として現前している。

 俺は改めてそのクロゴキブリを凝視する。どれほど目を凝らしても、その四肢はピクリとも動く気配はない。十分に、完全に、動きを止めてしまわれたように見える。
 

 あんまりだ。
 

 

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