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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第31話「真の再会。そして約束」

   

シアンが生きていると信じて、再会を願っていたエリザ。そして、ついにその時がやって来た。

「私は王国と家族を取り戻すその日まで、絶対に死なない。約束するわ。だから……私の最後の瞬間まで、見守っていてくれる?」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第31話「真の再会。そして約束」

 

 
 師匠の背中にその男が隠れきってしまっていてよく見えない。だが、あまり近づきすぎると師匠に勘づかれてしまう。私を不安にさせるようなことをしない彼のことだ。その男が亡国関係の人間なのだとしたら、絶対にその事実を隠すはず。師匠は私に胸を張れと言いながら、自分は目を伏せたままだから――――。失ったものに囚われ続けているように見える。私と同じだ。
 ぐっ、と感情を堪えて、彼等の様子を窺う。

「言い合いをしているのかしら……? いいえ……あれは……」

 言い合いをしているようにも見えるが、どうやら師匠は男を宥めようとしているようだ。
 もう少し近づいてみようと動いたその瞬間――――。

「俺……! 俺は……! 俺はな親父ッ!!」
「!」

 切実に叫ぶ男の声に、私は目を見開いて動きを止めた。
 聞き覚えがある。忘れるわけがない。私は、彼の声を聞いたことがある

 ――――冷たい海に沈んでいく。そんな私に手を伸ばす青年。彼は必死になって、私を守ってくれた。

 脳裏で浮かび上がった過去の記憶に、飲み込まれそうになりながらも、私は距離を縮めていく。

「あいつを守れなかったんだよッ……!」

 姿を隠すのも忘れて、惹かれるように歩きだす。

「違う……違うよ」

 あの人は十分守ってくれた。私の心を繋ぎ止めてくれたではないか。なのに何故、あれほど苦しんでいるのか。

「とにかく落ち着け。まずは家へ……」
「俺が戻って来たのは、あんたならどうにか出来ると思ったからだよ、師匠!!」

 男の姿が見えてきた。彼は、あの時と変わらない黒い髪をなびかせて、師匠にすがっていた。膝から崩れ落ちて叫ぶその様は、悲痛に満ちている。

「小さかった……まだガキだったんだ。なのに、あんなにか細い存在を俺は守ってやれなかった」
「お前……」
「守りたかったんだよ、俺。あいつをよぉ……ちゃーんとさ」
「わかってる。わかっているさ」
「……最後にあいつ、笑ったんだ。俺に向かって笑いやがった」

 ハハッ、と乾いた笑いを吐き出して、男は顔を伏せた。
 船上で誰よりも強く抗い、私の心を守った男が泣いている。彼の泣いている姿など想像もしていなかった。彼が泣いて、後悔していることを私は知らなかった。

「なあ……頼むよ、親父。を探してくれ。あいつが死ぬわけねぇんだ! 絶対に死んでなんかいねぇんだよ……!」

 (ああ、本当にこの人は――――)

 ザッ、と砂に足が埋まった。その音に師匠は振り返り、男は顔を上げた。一瞬の静寂の後に、潤んだ金色の瞳が私を映す。
 私はペンダントを握り締めて、口を開いた。見開かれた瞳から涙が溢れ落ちる。

?」

 そう、尋ねかける。もう震えを隠せそうになかった。
 

 

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