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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】2

   2017年10月4日  

 仲違いしているわけではないが御影と輪都の会話に彩りはない。車中は常に重苦しい空気が漂っている。

 輪都は御影探偵を見下していた。

 ナンバーツーの実力者であるが、氷室探偵の二人しかない。

 雑依頼ばかり任せられる御影に、今回の依頼が解決できるのか、と吹っかけてきた。

 御影は輪都と組まされてから、いいとこなしだった。

 ペット捜し、浮気調査、その他の雑依頼を汗だくになり、泥まみれになっている姿に共感どころか“なさけない”という印象をもったようだ。

 御影ははじめて探偵としての自分をみくだされたような気がしてショックをうけていた。

 こんかいの依頼はやや意気込みがちがうのだが…。

 

 レンタカーを借りて新宿から長野県へ向かう途中だ。綺麗な景色を眺めながらドライブ気分で現地まで、気のない、やる気ない、覇気のない男、輪都と一緒に狭小の車中を動向しないとならない。

「いやぁー、でもここまでの依頼をするとはドキドキだな」

 輪都は助手席でパソコンとにらめっこだ。

「おまえ、車に酔っちまうぞ…」

 御影の忠告を聞く耳はないらしい。どうやらデスクの上に置いてきたのかもしれないな。

 探偵として活気に満ちた御影。やる気なしの無表情の輪都。

 二人のチームはノコギリの歯のようにいびつでガタガタしている。やることなすこと空回りで、探偵の御影をそっけなく無視している。

「御影さん、ほんとうにこの依頼を解決できると思っているんですか?」

「どういう意味だ―─」

 前方を見ながら運転をする御影は、めずらしく輪都から話しかけてくるもんだからあやうくハンドルを握りしめる手が滑るところだった。

「ですから、あなたでこの難問を解けるのかって聞いてるんですよ」

 口を開けばこの物言いだ。一歳しか年は変わらないがなめすぎだ。

「おいおい、ふざけんなよ、俺は氷室探偵事務所のナンバーツーだ。探偵としてもいい眼を持っているんだぞ」

「ナンバーツーって、氷室さんと御影さんの二人しかいないでしょ。難事件の依頼はすべて氷室さん。浮気、ペットの探索、その他の雑依頼が御影さんの担当と分かれている。上下はっきりしていてわかりやすい。でも、御影さんが難事件を解決できる確率は十分の一。おおく見てあげて10%となるんですよ」

「なんだその確率というのは、氷室さんが難事件に集中していられるのも、俺が雑依頼をしているんだよ。てか、“雑依頼”てうまいこというな」

 御影は憤慨していた。

 輪都は知らないだけだ。だからあまり過去の話をほじくりかえすことはしない。

「以前はそうではなかったんだぞ。この探偵社もな」

「そうですか。以前というのはよくわかりませんけど、でも、現状の話ですと、こうなりますよね」

「こうなるって、おまえ俺のこと完全にみくだしてないか?」御影はさすがに、こめかみあたりの太い血管の脈がピクピク打っていた。

 輪都は頭を振った。「いいですか、みくだしているわけではないですよ。現実的に、いいとこなしなんですよ、御影さんが…」

 浮気調査では相手の浮気相手に存在がバレて告訴されたが、和解ですんだ。ペット探索は、まちがった種類のペットをみつけて、怒鳴られた。

 輪都がアルバイトとして御影の相棒として組まされてから、もう数十回依頼を成し遂げているが、最初のときはそれなりに関心されもしたが、同じペット捜しでも泥まみれになり、浮気調査だって一昼夜おなじ場所に張り込んでいる。

 遠目でみている輪都は御影探偵のその姿を客観視し情けなく感じていた。

 見習うべきところがまるでない。それが輪都のだした結論だった。

「な、なさけない?」御影は驚いた。この探偵という仕事を“なさけない”という考えはなかった。むしろ恥ずかしいはあってもだ。

「御影さんと組まされるというのは、それだけ自分もなさけない気分になるんです。だから極力内勤ですませたい。張り込みの差し入れもしたくない。自分でどうにかしてください」

 輪都はそういうとパソコンの画面に目をおとした。

 御影は、なさけない、そう思われていることにひどくショックだった。

 

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