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家元 第十二部(最終回) 踊りは素晴らしい

   

犯人ではないかと疑っていた田中康代の居所がつかめないまま、とうとうお披露目公演を迎えていた。

劇場に多数の招待客などが詰めかけ、正面のホールには志乃と琴乃が出迎えの挨拶に立っていた。

「警備員もいるから、大丈夫。」

京子と鏡佐知代がそう話していた時、控室の方から真紀子が「着物にペンキを噴きかけている女がいる」と顔色を変えて飛び出してきた。

犯人はやはり田中康代だった。

「どうして、うちだけ仲間外れなんよ?」

そう叫ぶ彼女に立ちはだかったのは、意外にも佳代子だった。

「苑田を汚す人は絶対に許さない!」

佳代子の気迫に圧倒された田中康代は警備員に連れていかれた。

そして、お披露目公演が始まった。

琴乃が「八島」を舞う姿に、「「血筋が大事」と言い続けていた真紀子の母、佳代子もやっぱり家元は琴乃さんやね。」と言った。

苑田流は志乃から琴乃に引き継がれ、さらに次世代へと歩み出していた。

最終回、どうもありがとうございました。

 

 
疑わしき人は消えてしまった
 

「毎日暑おすな。」
「ほんま。」

昭和60年(1985)9月、暦の上では秋なのに、京都は晴天続き、連日30度を超える真夏日が続いていた。

「京子はん、困りました。」

鏡佐知代は料理屋「小寿々」に来ていた。

「彼女の居所が分りませんのや。」
「家はどないになってました?」
「もう引っ越して、取り壊されておりました。」

犯人ではないかと疑っていた田中康代の居所がつかめない。

12年前に破門されてから、苑田の誰とも付き合いを絶っていたので、元の住所を手掛かりに探したが、近所で聞いても転居先は分らないとのことだった。

「役所で聞いても、親戚でもなければ教えられないって、冷たいもんどす。」
「仕方あらへんなあ。」

佐知代も京子もお茶を飲みながら、ため息をついていた。

お披露目公演は劇場を借りて行うが、生徒は勿論、支援者、招待客など多くの方々が来場されるので、人の出入りを完全にチェックすることは不可能だ。

5年前の昭和60年(1980)2月には、家元制度に反対する舞踊家が、以前所属していた流派の家元に切りつける事件が起きていた。
佐知代も京子も、田中康代がそこまではしないだろうと考えていたが、何が起きるか分らない。
 

 

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