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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】3

   

 西洋式建築の洋館が山奥に君臨していた。異様な雰囲気の屋敷に尻込みする探偵と助手。

 そしてついに扉が開く。でてきたのは年輩の執事だった。とても愛想のいい温和な人が出迎えてくれた。

 輪都が連絡したさいに、妙な感じたしたといったがそんなことはない。至って普通だと御影は思った。

 屋敷内の豪華な造りや装飾に圧倒されながら客間へ通された。そこには紅茶を用意している家政婦がいた。

 しばらくして主の城里京介が現れた。四十代だというのに、見た目が二十代に見える若々しさに驚いていた。

 あいさつもそこそこにして、御影は訪問した理由から述べていく。

“染野美幸”の名をだすと京介の顔色が…。

 

 山の窪みの平地に点在するロッジが見えた。さらにその先には田舎の風合いに似つかわしくない洋館風の屋敷がひとつ、異様な雰囲気をだしながら凛と佇んでいた。

 煉瓦やコンクリート・石などを用い西洋建築を模した建物だ。ステンドグラスが西洋館を演出している。主に明治、大正期に建てられたが、主の城里京介氏は自ら設計に口を出して1989年に着工し、一年後には竣工させた。

 こだわりぬいた空間というわけだ。

「輪都の調査力もなかなかだな。相変わらずこういうことは得意だ」

 たまに誉めても、クスリとも笑わないのが輪都の特徴だ。

 フットブレーキをゆっくりとかけた御影の足の裏にちからがはいる。これから依頼の調査だという実感が左足の裏の皮膚から否応に感じていた。

「すんげー屋敷」運転席から降りた御影があらためて洋館風の屋敷を見上げる。

 急勾配の三角屋根はアンティーク煉瓦を使用されている。覗き窓のガラスはステンドグラスが色あいをだしていた。ほかの複数の窓は白色の格子状がはめられていた。壁は煉瓦で外観の存在感を醸しだしていた。シンプルな造りだがゴージャス感をじゅうぶんに見る者に印象をのこすことだろう。昭和中盤に建築されたようだが、当時の形状を維持しているのはよほど定期的にメンテナンスを施しているのかもしれない。

「ちゃんと俺たちが伺うと連絡をしているな?」

「えぇ、執事の古我ってひとに取り次いでもらいました。だけど変な感じというか、愛想がないっていうか」

 それはおまえも同じだろ、と御影は心のなかで思った。

「金持ちの家って鼻にかかるんだよな」助手席から降りた輪都。急に話しだす。自分がいやなことを感じると、御影にたいしても会話の対象にしおしゃべりをはじめる。普段コツコツ黙って情報収集しているからの反動があるのだろう。黙っていられなくなり必要いじょうに話しだす。

「そうかいありがとよ。それじゃ、金持ちの扉をたずねてみるか」

 扉というのは、その家の顔のようなもの。この屋敷の扉も厳かで重圧感があり、扉の彫りはまるで裁判官が訪問者を選別するかのような迫力がある。眠りについた無表情な彫刻は来訪者をにらみつけている。

 御影はどこか尻込みしていた。ここまでの迫力の扉に訪問したことはない。

 コンコン、輪都は小突くように軽々しく手を丸め叩いていた。

 御影は愛想つかしていた。恐いもの知らずはほんと困る。危機察知能力がないのが恐い。

「これだけでかい屋敷にノックして聞こえるものか、呼び鈴があるだろ」

 しっかりと呼び鈴の押しボタンが設えてあった。輪都は物事の判別がつかない性分である。見た目を気にせず、これまでの人生論に培っただけで生きている。

「そうでした」輪都は呼び鈴を押す。

 ピンポーン。山の頂上まで響きそうな、かろやかな呼び鈴が鳴った。

 御影は助手となるこの若者に常識以上のさまざまなことを教えていかなければならない、と苦労がかさむことが予測できた。小柴といい、輪都といい、事務員というのはどうして無愛想で堅物なのか、そういう者が事務員としては自然と職を選択するのだろうか。それだと人生は生まれたときから歩み方が決まっているということになる。

 なら御影はどんな職がほんとうは望ましいのか、人を疑う職業が天職なのか…、探偵事務所の面接を受けるまえはそれはそれは苦労したものだ。思い出すだけで悪夢がよみがえる。答えがでないまま、しばらくして扉が開く。

 

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