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SF・ファンタジー・ホラー

紅蓮の翼 4

   

交渉相手に選ぶのは、鴬伽と近い位置にある男。

それが文化であることを否定する権利はないが。
やはり鴬伽にはこの国の思考をその根本から理解することは適わなかった。

案内された図書寮で、
西都に関しての書物を読む。

不定期に連載致します。

こちらにて初めての一般作品でございます。
こちらに関しては、
今後、一切の性描写も色恋沙汰もありませんので、あしからず。

 

「な、何でしょう……」
「そんな緊張しなくてもいい。別に取って食やしない」

 不随意筋が麻痺したように強張る美羽に鴬伽は笑い、水差しから水を注いでやった。

「あ、ありがとうございます」

 鴬伽のために持ってきた杯を渡されては、本末転倒だと考える暇もなく、美羽はそれに口をつける。

「落ち着いたか?」

 ごくごくと一気に飲み干した美羽に笑いかける。

「……お前の兄、青嵐に目通り願えるか?」

 落ち着きを取り戻した美羽に、鴬伽は勤めてゆっくりとした口調で尋ねた。

「……あ、はい。兄でしたら今、図書寮に……」

 それでも美羽は突然の提案に驚いたようだった。

「けれど、大僧正さまには……」
「判っている。いいんだ」

 目的に達するには遠回りが必要なのだ。
 そしてその遠回りが最も近道であることを鴬伽は知っている。
 大僧正が公務中ならば、文官の矢萩もそれについているだろうが、武人の青嵐はそうとは限らない。

 そして予想通り青嵐は暇をしている。
 それに鴬伽にとって文官の矢萩より、武人の青嵐のほうが話しやすさがあった。
 からかう対象としてならば矢萩のほうが面白みがあるのだが、交渉の相手とするのなら鴬伽には青嵐のほうが合っていると思うのだ。

 

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