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ラブストーリー

LOTUS 〜Girls&Dolls〜

   

「ん、今日のコウくんは、この角度が一番決まるみたいだね」
「真理ちゃんはー、将来、カメラマンさんになれるねー」
「ホントにそう思う?」

LOTUS』 ―真理×日向子―
≪光輝*高等部1年生*7月≫

Illustration:Dite

 

 わたしのお人形さーん?
 だめだよー、そんなの恥ずかしいから絶対だめー。

 どこかで読んだ古い小説に書いてあった「女性の家を訪ねる際は、花束とチョコレートを手土産に」というステキなルールを、真理はいつも忠実に実行していた。
 女学院の近くにある花屋の店先、そこで見つけたミニブーケに添えるのは、季節柄チョコレートではなく、瑠音から聞いた、日向子のごひいきパティスリーのココア・サブレ。愛しの姫君に捧げる手土産の、その総額は1000円弱とちょっと少ないが、大切なのは心意気であり、値段ではない。
(服よし・時間よし・手土産よし、と)
 期末テスト明けの日曜日。「光輝居ぬ間のなんとやら」で、真理は日向子に招かれ、成田家を訪れていた。
 光輝は本日、最愛の従弟と共に、映画デートに出掛けている。いつもは瑠音の提案に大人しく従うだけの光輝が、今回は珍しく自分から誘ったらしく、日向子の話によるとかなり入念なデートプランを組んで出発したらしい。
 姉と従弟をまるで掌中の珠のように守っている光輝のこと、当然、今回の映画デートも日暮れ前には瑠音を自宅に送り届けるような、清く正しく美しい、健全かつ安全なデートなのだろう。そんな光輝の「タガ」がいつまで外れずに持つだろうかと、真理はクスリと笑った。
(ヒナの家……そういえば、久しぶりだな)
 経済的には豊かなほうでも、家族愛に少々恵まれず、長期休暇でさえ寄宿舎に居残る真理を気遣ってか、日向子は光輝が瑠音の家に泊まる週末、真理を自宅に招くことがたびたびあった。
 寮則の厳しさゆえに外泊許可を取るのは難しかったが、「真理さん、たまにはごはんでも食べにいらっしゃいね」という亜紀子の言葉に、日向子も真理も甘えているのだった。
「えーと、髪も……ま、いっか」
 成田家の門前に立ち、もう一度、父親譲りのクセッ毛気味な前髪を直す。こうして準備万端整えて、真理は玄関の呼び鈴を鳴らした。
「こんにちは、藤堂です」
「はいはい。いらっしゃい、真理さん」
「お招き頂き、ありがとうございます、おばさま」
 小さな花束を手に、ニッコリ微笑むその姿は、まさに「女学院のプリンス」。本日は私服ゆえ、見た目こそちょっぴりボーイッシュだが、こうして対外用の笑顔&丁寧な言葉遣いを駆使すると、まったくもって非の打ちどころのない、本物のお嬢さまに見えてくるから不思議だった。
 だからこそ、亜紀子をはじめとする大人たちはコロッとだまされ、「さすが、都内屈指のお嬢さま学校に通っている子は違うわねぇ」ということになるのである。
「うちの日向子に、真理さんみたいなしっかりしたお友達がいて、本当に良かったわ。誰に似たのか、あの子ったら、だいぶおっとりさんだから」
「いえ、わたくしのほうこそ、日向子さんのような優しいお友達に恵まれて、こんなに幸せなことはありません。おばさまにも、何かと良くして頂いて……わたくし、母がおりませんから嬉しくて」
「まあ、真理さん」
 そんな殊勝なセリフと共に浮かべる、はにかむような微笑みに、娘同様に優しく、妹とは比べ物にならないくらい世話好きな亜紀子の胸がキュンとなる。

 

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