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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 14

   2017年10月17日  

 プラチナ仮面は姿を消した。

 抜け殻になった美園小枝子は現場付近の所轄署に移送された。

 

横浜市内・某警察署

 

 美園小枝子は、現場から最寄りの署に移された。

 スマホで撮影した写真には、プラチナ仮面の姿がはっきりと写っていた。しかし当直責任者への簡単な状況報告を終えた小枝子が応接室で休んでいる間も、被疑者確保の知らせは入ってこなかった。ソファーでうとうとしていた時、警視庁捜査本部の松崎秀直警部らが応接室に入ってきた。

「どうやら本物に違いなさそうだな」

 松崎警部は充血した目で小枝子の顔を凝視しながら言った。

「写真にも写ってるし、バカなコスプレマニアだったらとっくに連行されてたっぷり油を搾られてるはずだ。これだけ厳重な警戒網の中で行方をくらましてしまえるのは奴しかいない。それで君、奴と一緒に電車を飛び降りたんだって?」

 目の前の警部はしっかりした口調で喋っていた。どう見ても脱皮する直前の虫ではなさそうだった。

「はい、確かにそう記憶しています。電車内で異変が起きて、虫に襲われかけているところを、プラチナ仮面に助けられたと」
「ふーん。野郎め、柄にもなくヒーローとしてご登場ってわけか。でもな、婦警さん。君はどこで電車降りた?」
「え」
「覚えてないのか。君は綱島駅を過ぎた鶴見川の対岸で奴の写真を撮ってるが、君は綱島から一駅前の日吉で降車して、改札を通ってるんだよ」
「そんな……私は川を渡るまで、車内にいたはずでは」
「そうじゃないんだ。日吉駅の改札記録にも残ってる。日吉から鶴見川対岸まで約2.5キロ。どうやって移動したか全然記憶がないのか?」

 バカな。前夜は確かにアルコールが入っていたが、そんなに前後不覚になるほど飲んではいない。なのに何かに操られるみたいに、とんでもない場所で電車を降りたというのか?

 軽い恐慌状態の中で小枝子はハンドバッグを探った。定期券は盗まれておらず、確かに入っていた。

「もちろん当該列車には何も起きていないし、化け物みたいな虫どころかネズミ一匹見つかっていないよ。それでプラチナ仮面は君に『また会おう』って言ったんだな?」
「はい……」

 松崎警部の目がギラリと光った。何か閃くものがあったのだろうかと思ったが、尋ねるのは怖かった。

「まぁ、今日は人を付けるから車で帰ってもらおう。明日一日は家から出ない方がいい」
「明日は8時までに出勤しないといけないんですが」
「それどころじゃないんだよ。君は危うくプラチナ仮面に誘拐されるところだった。分かるだろう?」

 松崎警部から無表情に見つめられ、ようやく小枝子にも事の成り行きが飲み込めてきた気がした。

「奴はとんでもない悪党だ。君みたいなお嬢さんを手玉に取るのなんか朝飯前さ。奴が何を考えてるのか分からんが、プラチナ仮面に狙われてるんだから、こっちだって全力で保護しなきゃならん。署の仕事のことはしばらく忘れるんだな」
「はい……」
「家の周りには警戒人員を配置するし、後でまた話を聞きたい。大変だろうが君も警察官だ。職務だと思ってくれ」

 職務と言われて、心に少し張りが戻った。「分かりました」と答える小枝子に軽く頷き返して、松崎警部は署の応接室を出て行った。
 
 

*   *   *

 

 

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