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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】7

   

 輪都がネットで検索し場所を特定した。

 だが御影は当初郵便局を探すつもりが別の意図が隠されていた。

 見つけた二人は聞き込みという探索につきものの地味な行動へ移行した。

 ある店で重要な代物を借りて探偵事務所にもどる。御影の推測がただしければ、それはたしかな証拠となる。

 御影は一人応接室で証拠を吟味していた。時間など気にせずどこまでも突き進む御影の精神力は脅威だろう。
 
 

 一睡もせずに眼を酷使したためか朝陽が眼を差す。それでも充足感があったためコーヒーをのんで気持ちを安らげたい衝動がこみあげていた。その一杯がすべての苦労を帳消しにするからだ。

 検証した証拠を氷室にみせる。これを糸口に調査は佳境になるだろう。

 あとは個人の人生経緯から疑惑がないか調べるだけだ──。

 

 ネット検索でそれらしき場所をつきとめた輪都。「ここかもしれない」

「見つけたか? どこだ?」御影が輪都のノートパソコンの画面を覗く。

「横川郵便局ですよね。ここらを手当たりしだいに…」

「いや、だいじょぶだ。もし、ダメなら仕方ないがここら辺の店舗もしらべる」

「店舗? 郵便局ではなくて」

「そうだ。店にはあるものが設えてある。それをたしかめたい」

 輪都はいまいち御影の推測の域に達しておらずその意味がつながらないようだ。ネットの検索情報はどこでも、どんなものでも調べたいものへつなげてくれるというのに。

「とりあえず、横川郵便局付近へ行こう」

 輪都の調べで長野県からは安曇野市から143号線、上田市に入り18号線を通る。小諸市から日本ロマンティック街道から軽井沢に入れる。そのさきのルートから群馬県へ入り、その横川郵便局へルートはつながっている。

「ほんとうにあってんだろな、この道…」御影は周囲の景色を目視しながらぼやいている。

 御影の運転は少々荒くなっていた。

「だいじょうぶです。たまには信用してください。僕だって“氷室探偵事務所の一員”なんですよ」

 輪都が笑みをこぼした。それは恥じらいと無邪気さが含まれているような笑みだ。

 御影は静かな車内が我慢ならず助手を茶化すためになじってみたが、意外にも真剣に職務に勤しんでいたことにおのれ自身も拡散した注意力を集中させた。

 パソコン画面に食い入るときだけは輪都も本気モードになるようだ。

 しばらくして輪都がひとつの場所を絞った。長野県から群馬県に入る場所でポストを見つけた。しかも店舗がある場所はひとつだけだった。

「群馬県 安中市 ふじや商店という小さな店にポストがあります。画像もありますよ。差出箱14号…」輪都が事務的に言った。

「便利な世の中だ。すぐにこんな場所が見つかるとはな。でもそこかもしれない」

 数分後。目的地に着いた。

 輪都はポストと辺りの風景の写真撮影をすませると助手席にもどった。

 御影はポストを調べながら唯一店舗がある店のなかへと入った。コンビニエンスストアのような店舗だ。

 数分後、もどってきた御影の手にはビニール袋が握られていた。地元のお土産を購入していた。

「なにしにいったんすか」

 ガサガサとビニール袋の音が耳障りで、こんな僻地まできて買い物をしている探偵に頭にきていた。

 御影は輪都の問いに答えず、「当たりだ」と言って自動車のキーを挿しながら話しを続ける。「お土産を買いにいったわけじゃない。店舗内には防犯カメラがあって、録画されたDVDを借りてきた。事務所にもどったらぜんぶみるぞ。おそらくこの封書の消印の日付であろう前後二、三日を調べればだれが送り主かはっきりする」

 輪都もひらめいた。「なるほど、その人物もその店に立ち寄った可能性があると…その防犯カメラに映っているかもしれないわけですね」

「映っているかもしれない、ではない。少しだけ見させてもらったが見覚えがある人物が映っていた──」御影はほくそえんだ。

 輪都は呆気にとられていた。「こんなにもはやくみつかるとは、じゃぁ横川郵便局には行かないんですね」

「そういうことだ…警察もこういう捜査はしているけど、真摯に頼んだら協力してくれた。気さくな方だな、やっぱり田舎の人はやさしいよ」

 輪都は疑問視していた。「そうですね、それでビニール袋の中身、テープだけではなくてごっそりお土産物を買わされて、さぞやさしい方ですよね」

 御影はあごが下がる。「そうだな。欲しい物があればそれなりの投資はつきものだ。探偵は取引に応じなければ情報を得られない。警察とのちがいはそこかな」

 輪都はあきれていたが、まんざらではない微笑を浮かべていた。

「でも、これは経費では落ちないんだよな」御影は眉をハの字にして笑っていた。

 

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