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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

探偵の眼・御影解宗の推理 【嘆きの双子】9

   

 内輪のパーティーだというのに夜まで開かれていた。

 結局なにも言えずに一泊することになった。しかし、この屋敷には個室が多くあり御影たちも宿泊を許された。

 夕方に長柄と遭遇したが、そのときの長柄の顔つきときたら鬼気迫るものがあった。

 勝手に城里家の歴代の写真が飾られている部屋に無断で入ってしまったからかもしれない。

 そこには客間に飾られていた家族写真が二枚飾られていた。おなじものを二枚というのがおかしいと思ったが、長柄のきびしい眼差しに出ていかざるを得なかった。

 御影は夜中に目がさめトイレにいく。広い屋敷に迷ってしまうが、ある通路のところで妙な灯りが目にはいった。

 探偵として確認したいという気持ちにせかされ調べようと近づく。

 そこはただの壁しかない。でも御影は気づいた。そのとき背後に…

 

 パーティーは終わりをみせない。これでもかってくらいに料理は振る舞われ酒にのまれていく。

 男たちは経済やこのさきの企業理念やらと堅苦しい話をしていた。女たちは家族のことや恋人の話で花を咲かせていた。

 これが人間らしさというべき情景というものだろうか。内輪とはいえ傍目も気にせず、男は金、女は色恋沙汰の話だ。どんな話題から始まっても男女それぞれの最終的にいきつく話というのはこれになるのだろう。

 御影はあまりこういう広義の場というのが苦手だった。御影の実家でもたまに開かれるが、いちいち愛想を振りまくのに疲れるからだ。

 こんな光景を目の当たりにして身震いしていた。

「輪都、トイレいってくるから」

 助手はまたしてもローストビーフを皿に山盛りにしてむさぼりついていた。さっきまでは食べつかれたのは満腹になったかで、サラダや変わったフルーツをつまんでいたが、またしても肉に目が移ったようだ。

「ふぉーん」と頬を膨らませながら返事をした。

 あまりにも広い屋敷のためトイレにいったら帰ってこれない。慣れない場所にくると方向音痴になる。自分では認めないが多少なりともあるのだ。

 やはりというべきか、案の定御影はさまよっていた。

「どこだ、おなじ通路とおっているような気がする」

 最初におとずれたときの客間とおなじような部屋の扉が開いていた。そこは写真が置かれていた。

 家族写真だ。壁に飾られている。ご先祖様の顔写真も歴代の名前とともに飾られていた。

 御影は歴史を感じるな、と写真だけでそう思った。

 おそらく飾られている並びとして最新の家族写真、これは客間にあった家族写真とおなじものが飾られている。それともう一枚ある。だが、なにか違和感を感じてならない。

「これはなんだ、なんかへんだな…」

 凝視してこの違和感を晴らそうと眼を凝らしていた。あまりにも集中してその違和感の問いに答えをだそうとしたが、そのまえに背後から声をかけられた。

「なにをされております?」

 御影の心臓は、きゅうりに気づいた猫のように跳ね上がった。

 扉を少し開いたままにしていたせいか、女性の声がとびこんできた。

「いえ、ちょっと、迷ってしまって」愛想笑いをしてごまかそうとしたのを見抜かれているだろうが、そうするしかなかった。

「そうですか、あまり勝手に動きまわらないでください」

「あ、はい…」

 御影は長柄の印象があまりにも刺々しく、やさしい紅茶を淹れてくれた長柄ではないのではないかと疑いたくなった。

「長柄さん、昨日からお出かけされていたってききました──」

 古我から話しをうかがったことをいった。すると長柄の表情が一変した。視線をそらし唇の端から頬にかけて筋肉がぶるっとふるえた。まるで憎しみを噛み殺すかのように。

「ええ、すこし所用がありましたので、さきほどもどってまいりました」

「どちらへ?」

「山梨です。この時期は知り合いのぶどう園の出来具体などをうかがいに、秋の味覚ですから。紅葉も一望できるいい季節ですからね」
 そう話す長柄はとてもおだやかな表情だった。秋の味覚にうっとりするように、憧れさえいだく少女のようだった。

「そうですか…」

「お客様は広間へ、それと探偵としての仕事は慎んでください。口を結んで黙ってくだされ、せっかくのパーティーですから」

 御影がその部屋をでるまで長柄が見張るように観ている。その気配と態度で異様な殺気が放っているようで、恐くなった。

「はい、それでは、俺…広間にもどります。料理をすこしいただきたいと思いますので」

 そこまで腹は空いていない。ごまかし理由が稚拙だったかもしれない。

「ええ、そうしてくだされ、私も精魂尽くして調理しましたの」幸福そうに微笑みを浮かべた。これが長柄だ。この印象が前回やさしい紅茶を淹れてくれた長柄だ。

 この変貌ぶりはいったい…、みられたくないなにかがあの部屋にあったというのか、そんなことはない。ただ気になるのはあの二枚の写真だ。

 客間にあった写真と、同様のものをもうひとつ飾っていた。同じ写真を二枚飾る意味とは。考えすぎか。

 胸の内はすっきりしなかったがしかたがない。退散するしかなかった。

 

-ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
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