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ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

怪盗プラチナ仮面 16

   

 見下ろせば、そこに川がある。

 あそこには、ずっと昔に知ってた川と同じ水が流れている。
 

 そして私の中を流れる川にも、同じ水が。

 

横浜市内

 

 壁掛け時計の針が23時を回った。窓の外から、バイクの音や東横線の通過音が遠く近く響いてくる。美園小枝子はベッドに仰向けになって天井を見つめていた。就寝するにはまだ早い時間だった。

 プラチナ仮面に遭遇した晩から2日、両親と同居している自宅マンションにほとんど「軟禁状態」になっている。警察関係以外では、電話やメールで外部と連絡を取ることも禁じられていた。

 家にいても、食事などの時以外はほとんど自室に閉じこもっている。外出時には私服の女性警官2名が付き添うと言われ、かえって外に出るのが億劫になってしまった。窓からカーテンをずらして外を覗いても別段物々しい雰囲気はうかがえないのだが、マンション近くの随所に覆面パトカーを配置して監視していることは聞いていた。

 神奈川県職員の父は今日も午前中だけで帰宅し、小枝子同様ほとんど家から出ず、沈んだ表情でテレビを見たり新聞を読んだりしている。そして家の中には県警捜査一課の刑事が交代で張り込んでいる。この日昼から来た32歳の女性刑事は一見穏やかそうな人柄に見えたが、それでも強行犯の検挙で本部長表彰を受けたこともある柔道四段の猛者だという。女性で刑事になる人は根本的に何かが違うのか、などと小枝子は思ったりした。
 

 前日の午後3時過ぎに携帯が鳴り、表示された番号を見ると警視庁の代表だった。電話の相手が「刑事部の増子です」と名乗るのを聞いた瞬間、心臓が口から飛び出しそうになった。

「は、はい! 汐留署交通課の、美園、と申します!」
「このたびは大変でしたね。健康の方は問題ありませんか」
「はい! 至極順調です!」
「それは良かった」
「い、いえ、まったく私の軽率な対応から、1××号検挙の機会を逃して」
「いいんですよ、無事で何よりでした。私にもちょうど美園さんと同じくらいの……といってもまだ大学生ですが、娘がいましてね。今回の件は他人事とは思えなかった」
「それは、恐縮です」
「しかし、あなたは警察官だ。あなたにはいろいろと協力してもらわなければならないが、これも職務です。1××号を検挙できるかどうかは、もしかするとあなた次第になるかもしれない」

 私次第? 思わず「自分のような者には……」と言いそうになったが、警察官にあるまじき逃げ腰な態度と気付き、黙って相手の言葉を待った。

「というわけで、よろしいかな?」
「はい……! どのようなことでしょうか」
「実はね」

 携帯の向こう側で、刑事部長は3秒ほど間を置いた。

「あなたの家のすぐ近くに来ているんだ。ちょっと話したいのだが外に出られるかな?」
「え、あ、……はい、了解です」
 

 

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