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アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編 第33話「過ごした二年間」

   

エリザと別れた後のシアンが過ごした二年間。

「俺があの婆さんに従ってたのは、あの町が最後だと思ったからだ」

『アストラジルド~亡国を継ぐ者~アグランド編』
【毎週更新】

第33話「過ごした二年間」

 

 
 優しい時間が過ぎていく。そして、これが家族なのだと知る。

 私が家族全員で過ごしたのは、もう何年も前のことだ。父が去り、母が死に、祖父からは拒絶され、抗う間もなく離れ離れになった。家族を繋ぎ止めるには、私もルイスも幼すぎたのだろう。だから、『家族の姿』も『幸せな未来』も私にはわからなかった。私には、何もなかったのだ。ルイスと過ごした日々、それ以外の幸福を知らなかった。だから、見てみたい。知りたい。少しでも役に立ちたい。そうすることで、この世界の悪意に立ち向かうのだ。

 亡国の人々の今を変え、未来を紡ぐ為に、私はこれから歩みだす。

「スウェナさん」
「! あっ……嫌だわ、私ったら人前でこんな」

 赤面してシアンから離れた彼女の手を取り、私は瞳を閉じた。

 私はもう一人ではない。だから今は、ルイスが傍にいなくても孤独だとは感じない。私はもう自分の力で立って歩いていけるから。

「ありがとう」

 改めて口にする感謝の言葉は、少しだけ気恥ずかしかった。

「ありがとう、スウェナさん」
「エリザちゃん……」
「この島で、エリザとして生きられてよかったとそう思います。そうしなくては、きっとシアンと再会することは出来なかっただろうから……」

 亡の欠片を持つ精霊達を探し、天使への手がかりを得ること。そして、父に会い、話をする。それは、私の兄の真実を知る道筋にもなるはずだ。

「全てを知る為に戦います。国を取り戻し、兄ともう一度会う為に」

 最初から私の望みはそれだった。ルイスとの別れが忘れられない。彼を失った感覚が消えない。
 これが、『兄妹』以上の感情なのだとしても私は――――彼を求め続ける。

「……兄様に会いたい」

 私がそう呟くと、スウェナは迷うことなく私を抱き締めた。

***

 テーブルの前で、私は横に座るシアンを見上げた。向かいの席には師匠とスウェナ、そしてキールが座っている。

「で? お前は一体今の今まで何してたんだ」
「まさか、姉ちゃんみたいにずっと眠ってたとか!?」
「はあ? 何だそりゃ」

 シアンはキールの期待の込められた眼差しに呆れたように返すと、頬杖を突いた。そして、語り出す。

「あの日、エリザを追いかけて、俺も海に落ちた。けど嵐の中、運よく漂流物に体が乗り上げて、そのまま気を失って海に浮いてるとこを海賊かいぞくに拾われたんだよ」
「か、海賊ですかっ?」

 彼の居場所としては、とても似合う気がした。
 

 

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