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特別な価値がある土地

   

西浜 典行は表向きは不動産業者だったが、その実態は価値のない土地を高く売りつける詐欺師まがいの人間だった。

しかし、後ろ暗い相手だけを顧客に選び、企業や行政幹部の秘密の書類をつける周到さから、何の問題もなく仕事を続けていた。

そんなある日、西浜のところに妙な話が舞い込んでくる。ある国にある島の土地を西浜に譲りたい、と言うのだ。

その島は明らかに特上の価値を持っており、西浜は勢い込んで現場に向かうことにしたのだが……

 

「ええ、これは本当に確かな情報です。何とあの積算カンパニーが再開発の計画を立てているんです。給電の問題も今やソーラー・パネルでどうにでもなりますし、飲料水の問題も先般開発されたろ過装置でいける、ということでね。もちろん街路整備には少々時間がかかりますが、南には泥炭地、少し西に行けば石灰鉱山、掘り進めるだけでかなりまかなえますよ」
 西浜 典行は、電話越しの相手に、まるで巨大な宝箱を見つけた冒険者のような熱を込めて語り続けていた。
 すると、話を聞いている初老の男にも、その熱度は強烈に伝染していく。
「なにっ、積算カンパニーだと! 最近少々株価は安いが、やると言ったら必ずやるところだ。俺も知らないわけじゃない。あの欧州再開発の時は場を開いて大儲けさせてもらったからな」
「ええ、その積算カンパニーが秘密裏に土地を取得したんです。組長さんは私の名前を出して、第二総務課長の田口という男に『あの地面の……』と切り出して頂くだけで大丈夫です。現状の地価の倍、東京の空き地の十分の一ぐらいの金を出して引き取ることにすれば、年内にもお宝のような巨大な土地が手に入ります。写真はお送りしましたが、再開発計画の要のようで……」
 西浜は受話器越しの相手に向けて、ぐっと握り拳まで作ってみせた。
 もちろん見えるわけはないが、相手は伝わってくる熱に耐えかねたようにふうっと震えるような吐息を放ってから、さらに声を発した。
「ようし、買おう。元々いくらあっても表には出せねえんなら、別のモンに変えちまう方がいいからな。土地なら泥棒に盗まれることもねえ。だが、その話は本当なんだろうな? 積算カンパニーがやるには、ちょっとリスクがあるかなって思うんだがよ」
「私が直接仕事をするわけではないですが、情報は確かですよ。田口から社外秘、いえ、未だ部外にも公開を禁じられている資料を手に入れましたからね。ただ、もし心配なら、彼に会った時に閲覧を求めるのがよろしいでしょう。田口さんは気さくな方ですから、『親しい』課員の二、三人ぐらい紹介して下さるかも」
「分かった。すぐ話をさせて貰う。前金はいつもの口座からでいいんだよな。誰にも言うなよ。俺が契約するまではな」
「ありがとうございます! では早速彼に話をしておきます」
 かなり慌てた様子の息遣いや足音が聞こえてから、前触れなくぶつりと切れた電話越しに声を上げ、深々と頭を下げた。
 しかし頭を上げ、受話器を元に戻した彼の顔には、ほんの一かけらほども誠意を感じることはできない笑みが浮かんでいた。

 

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